このレビューはネタバレを含みます▼
愛には、恋愛・性愛・家族の愛・友愛・親愛・無償の愛など様々な形がありますが、ジーンとトレヴァーとの愛にはそのすべてが含まれていて、何をもって2人のハッピーエンドとなるかは一概には言えない…という、とても深い物語です。
ジーンもトレヴァーも心の内に「自身の罪」を抱えており、ジーンは「何者かになる」ため、家族と生まれ故郷を捨てた罪悪感と後悔に苛まれていました。
トレヴァーは、養父母から愛情深く育ててもらったものの、自分がいなければ家族3人の完璧な幸せがあったのではないかという負い目を抱えて生きており、ゆえに自分がジーンの人生を邪魔してはならないという気持ちがあったのではないでしょうか。
だからこそ、一度はジーンに縋りついたものの、最終的にはジーンを送り出すことを決心したのだと思います
『ラムスプリンガ』で「愛とは素晴らしい呪い」だとクロエは呟きましたが、ジーンとトレヴァーは「相手を縛る愛」ではなく「相手を自由にする愛」を選び、シリーズ作品でありながら2つの対照的な愛を描き出すことで「愛にも様々な形がある」ことが表現されています。
何の約束もなく二人が離れ連絡さえ取らなかったのも、2人の愛情の深さゆえ連絡を取ってしまったら、また離れることが辛く困難になってしまう…という大人の理性もあったのではないでしょうか。
最後まで今後2人がどのような関係性になるのか明らかにされませんが、世界を見てきて「何者かになれたかもしれない」と納得できたジーンが再びNYに戻ることを選び、トレヴァーはジーンのために花を買ったことから、2人の答えはすでに出ているような気がします。
1巻でトレヴァーが「友人にしては歳が離れて見えるのは確かだろう。大差なくなるにはあと20年」と言ったように、出会いからおよそ20年を経た彼らは、もう人目を気にしなくてもよい「親友かつ恋人」に今後なることができるのではないでしょうか。
今後トレヴァーと幸せに暮らすであろうジーン、これから人生の選択をしていく甥のジーンと姪のジーン。
彼らが選ぶ人生はすべて違うけれど、どれ一つとして誤りではない。
アーミッシュシリーズとして大きな大団円を結末にもってきた、吾妻先生に感服する次第です。
特装版にはその後の2人や、『ラムスプリンガ』のテムとオズの幸せそうな暮らしぶりも出てくるので、全力で特装版をオススメします!