おはようとおやすみとそのあとに
」のレビュー

おはようとおやすみとそのあとに

波真田かもめ

作者買いです

ネタバレ
2025年10月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ 波真田かもめ先生の作品はみんな大好きですが、「スモークブルーの雨のち晴れ」と「おはようとおやすみとそのあとに」は特に好きです。先生が描く淡々とした日常が綴られていく物語は味わい深くて、読み返す度に新たな気づきが得られます。

おはようとおやすみの度に、大切な人が隣に居てくれるという幸せを確かめる。こんなにも、ただの挨拶に愛おしさを感じさせてくれる作品はなかなか無いと思います。繰り返される日々は重なり、7巻のラストで2人は7度目の春を迎えます。彼らは寄り添い合いながらも、それそれ自立して生きています。ここまで色んな事があったけれど、幸せだと微笑む顔には一点の曇りもなく、説得力がありました。

開人と伊介の恋と成長の物語もすごく良かったけれど、私は開人と父親の話が妙に心に残りました。
身体が弱かった母と幼い頃に死別した開人。開人が高校の時に父親が再婚。再婚相手の良さを「健康であること」だと父が言った時、開人は思わず「好きで病気になる人なんていないよ」と言ってしまう。闘病する母を思い遣り、看病する父を気遣い、幼い頃から言いたいことを飲み込み、やりたいことも我慢して、甘えを切り捨てて生きてきたであろう開人でも、父親のこの一言は我慢がならなかったのでしょう。開人が父に反抗したのはこの時くらいなのでは?そう思うと切なくなります。
再婚相手との間に子供が産まれ、みんなで開人に会いに来た時に、父親は過去に失言について謝りますが、なんと開人も謝るんですよ。「えーっ!謝んなくて良くね?!」って正直思いましたけど、ここで大人げない発言だったと謝るところが開人なんだと思いました。高校生の自分にさえ大人な対応を求めるんだなぁ。
とはいえ、そんな開人だからこそ、伊介を運命だと感じるのも納得できる。伊介は開人が切り捨ててきたものを全て持っている。伊介は甘ったれで我儘でこだわりが強い上、我を通すことを厭わない。伊介が伊介でいるだけで、開人は満たされるんじゃないかな。逆も然りで、伊介が開人に猛烈に惹かれるのもわかる。今の2人をあの世から眺めて、開人母も喜んでいるだろうなぁと思うと涙がジンワリ。5巻に2人で開人母の墓参りに行く話がありましたが、2人を見守る母の気配をずっと感じながら読んでいました。開人には本当に幸せになってもらいたいと思います。
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