裏方バディ!
」のレビュー

裏方バディ!

波真田かもめ

作者買いです

ネタバレ
2025年10月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ 龍矢は幼い頃から両親の期待に応えようと頑張ってきたけれど、医学部受験に2度失敗。両親に失望され、心が折れる。何となく舞台の大道具の設営会社に就職して2か月経った頃、龍矢は初めて全国ツアーの仕事に参加することになり、この道11年のベテラン社員の伊織が教育係についた。伊織は現場ではみんなから頼りにされていて仕事も完璧なんだけど、幼い頃に同じ裏方の仕事をしていた父親が現場の事故で亡くなったのを目の前で見てしまい、今でもPTSDのような症状に苦しんでいた。

たぶん伊織は今まで誰にも気取られないようにしていたんだと思うけれど、たまたまPTSDの症状が出て動けなくなっているところを龍矢が発見して、その時の介抱の仕方が凄く優しく温かいものだったから、読んでいる私までホッとして身を預けたくなる衝動に駆られました。この2人のお互いへの思いが少しずつ大きくなるごとに、少しずつ行動にも表れていって、本当に自然に違和感なく関係が深まっていくところが凄く良かったです。

個人的には「裏方はやるべき事をやっても褒められはしないけど、信頼が生まれる」という下りが好きでした。その信頼こそが認められたという証であり、龍矢の求めていた承認だったのではと思います。過去の回想を読みながら、龍矢は称賛されたい訳ではなく、大好きな人に喜んでもらいたいのが承認欲求の根底にあるのかなと感じていました。伊織の魅力にハマるのと同時進行で、仕事の魅力にもハマっていくところが何か良いなと思いました。

プライベートでもパートナーになった2人は、これからは今まで以上に息の合う最高のバディとしてバリバリ仕事をこなしていくんだろうなと、明るく楽し気な未来を想像できる素敵なラストに大満足です。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!