このレビューはネタバレを含みます▼
静かな夜。二人の息ずかいのように降る雨。背広とアジアンティストの異なる衣装。なのに、違和感はない。唐突な恋の始まりも、落ちる時はそんなもの。
いかにもな、おとなし系の典くん。今はエスニックグッズとカフェの店員さんですが、以前は美容師さんでした。店内競争と指導力劣る上司との人間関係で弾き飛ばされてしまう繊細さで、いわゆる世間で言われる弱者なのですが、私はこの人の心根の優しさと佇まいが好き。必要なのは刺激よりも安らぎ。実際、こんな店員さんの居るお店があれば通いたい。
ビターなコーヒーや強い炭酸水的刺激を望む読者さんには刺さらないかも。それでも、私にとっては白湯のように心地の良い作品でした。そう。これといった大波が有るでもなく、淡々と地味に進行。濡れ場シーンも、何だか長年夫婦やってきたカップルのように可もなく不可もなく。でも、私には黄金だと思ってチョイスした作品が、実はプラスチックだったかと非表示に移すことが多い中で、この作品はお気に。２で終了とのことではありますが、２があれば3もあり。典くんの手首の傷も気になるし、まだまだ浸りたい作品。作者様、版元様、お願いします。
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