このレビューはネタバレを含みます▼
一片の美しい夢のようなストーリーでした。変わり者で家族と疎遠だった父が生前、我が子のように慈しみ愛を与え続けたラブドールの半朱(ハンス)。半朱をとおして礼央(レオ)は幼き日の父の記憶を呼び起こされ、二人で父の好きだった音楽に耳を傾けながらありし日を偲びます。たった一コマから、二人の魂が寄り添い、静かで満ち足りた時間が流れるのを感じ、心が震えました。
昭仁さんが半朱にすべてを与えたように半朱も昭仁さんを愛していたことを、昭仁さんは知らなかったかもしれない。けれど二人の愛が奇跡を起こし、半朱と過ごした束の間の記憶がこれから先、礼央の心を支えていくんじゃないかと思いました。
丸木戸マキ先生の作品は心の奥深いところに語りかけて来るようで、この作品も涙なしには読めませんでした。同時に所々クスッと笑わせてくれるシーンもあって、読後は切なくも温かい気持ちになりました。この作品に出会えて本当に良かったです。