このレビューはネタバレを含みます▼
太平洋戦争の沖縄戦、ひめゆり学徒隊を題材にした物語。
主人公の、サンという名前が不可解だったのだけど、
マユ=繭、サン=養蚕(ようさん)のサン、つまり蚕(かいこ)のことなんだろうな。
糸を採るためにマユから出てくる前に茹でられて殺されてしまうという養蚕の説明がなかなか衝撃的…。
殺される蚕と、次の繭を産み出すために生き残る蚕。
生死が別れるこの先の未来を暗示しているし、マユ=国 サン=国民 の構図が見えてくる。
「男なんていない みんな白い影法師なんだ」など、現実逃避でサンの精神を守るマユの姿は、勝利のみを伝え、負けが込んできても戦況を正しく伝えなかった当時の日本と重なる。
「お国のために」というお馴染みのフレーズも、呪文であり一種のおまじないのようなものだし、この頃の日本国民は、日清・日露戦争を経て、大日本帝国という夢(空想)を見ていた。
世界の状況を知らず、繭に包まれたまま死んでいった女学生達…
タイトルCOCOON(繭)は、マユとサン、そして当時の日本の両方の意味が込められた、秀逸なタイトルだと思う。
マユが男の子だと分かった上で読んだ2周目がなんとも切なくて…
おまじないや空想という繭でサンを囲って守るマユ。昨日隣り合って話をした友達が、今日肉塊になる非現実的な現実は、そうでもしなければやっていけないよね。。。
マユが男の子で、サンを女の子として好きならば、サンの潔癖な少女性は、清らかなもの、愛しいものとして見えただろう。
水辺でのシーン。椿組の女生徒が自決を選択する場にサンを置いて去ったシーン。死を選択しなかったサンの手を引っ張って鼓舞するシーン…色んなシーンでマユの気持ちが見えてきて、マユのラストシーンはもう……
まさに繭に包むかの様な柔らかい表現で、当時の日本の本質が描かれた優れた戦争もの。そして、秘めた心が切ない恋のお話でした。