「ファントムルース~魔女が夢見た最後の楽園~(話売り)
」のレビュー

ファントムルース~魔女が夢見た最後の楽園~(話売り)

石据カチル

耽美な世界観と物語に心ごと奪われる

ネタバレ
2026年8月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ 豊かな表現力と優れた構成力によって綿密に練り上げられたオリジナルストーリー。

御伽噺を思わせる世界観の中に、天使や悪魔といったテーマや思想が織り込まれていて、どこか哲学的で文学的な趣も感じられるのがとても印象的。

香水を作品のコンセプトとして描く独創的な設定が、ダークで色香の漂う不思議な世界へと誘います。

アンヘルは前作「Rosen Blood~背徳の冥館~」の最終話にも登場したキャラクターであり、今作はスピンオフともいえる作品。

前作との繋がりを感じられる事で、物語の背景に何が隠されているのか想像する楽しみもより一層深まります。

アンヘルはスペイン語で「天使」を意味し、ラピシアはラテン語で「石」を意味する「ラピス」を指していそう。

そして「薔薇」というモチーフも、前作の設定を踏まえて考えると、今作ではどのような意味を持つのか気になるところ。

この薔薇はロゼの血で育った薔薇であり、前作の最終話で主人公(前作の)ステラから手渡されたもので、アンヘルがラピシアにこの薔薇を渡すシーンもあります。

単なる美しいモチーフではなく、前作から続く世界観の中で大きな意味を持ち物語の鍵となりそう。

そして、薔薇の運び屋として前作のギルバートが登場していることにも注目(今作では仮面を被っています)

ラピシアの過去の記憶が封じ込められた理由など、まだ謎は多く随所に伏線が散りばめられており、どこに着地するのか最後まで予想できない展開が想像力を掻き立て謎を解き明かすにはもう少し読み進める必要がありそう。

ラピシア=ロゼ(転生?)と予想しており、ひとつひとつの描写や言葉の意味まで考えながら次の話を読みたくなります。

ダークさの中に随所で品が醸し出されているのもカチル先生の作品ならではの魅力。

読後に余韻が残り、まるで上質なワインを味わった時のような芳醇な読感。

美しい世界観と物語に陶酔させられ、気づけば作品そのものに耽溺している。

美麗な作画、香水を軸とした独創的な世界観、哲学や文学を思わせる奥行き、そして前作から繋がる先の読めないストーリーそのすべてが絡み合い、次の話を読みたいと渇望させる。

前作も練り込まれた壮大なストーリーでしたが、今作との繋がりを感じながら読む事でより深くこの世界観に入り込める筈です。
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