「穢れのない人
」のレビュー

穢れのない人

虫飼夏子

心掻き乱される

ネタバレ
2026年8月24日
このレビューはネタバレを含みます▼ 上下巻→☆4
上下巻+後日譚→☆5

冤罪を着せられた秋鷹はぐちゃぐちゃになりながらも恭介を赦すことにし、恭介は社会的な償いを果たした。犯行に至る背景に同情の余地も感じる。けれど、被害者遺族の感情は…?という、被害者側の存在感の希薄さがどうにも気に掛かった上下巻。
それとはまた別に、最悪の犯行様態をなしてしまった根源にあったのは親の愛を求める子どもらしい感情の爆発であったのに、そうまでして求めたものが実際には愛とはほど遠い薄汚い欲望であったことがどうしてもやる瀬無い。

単行本版のレビューで後日譚の存在を知り、単話版7話を買い求めた。上下巻での引っかかりを見事に回収しながら、新たな煩悶が胸に残された。

予期していたという通り、恭介にとっては予定調和というか、とうとうこの日がきたという安堵のようなものさえあったかもしれないし、おそらく唯一の解放される道なのかもしれない。それでも秋鷹の事を思うと、最後に生にしがみついてほしくもある。そして恭介を失ったとして、秋鷹はそれをもまた赦すのだろうと思うと勝手に胸が苦しくなる。

これは…とは思いながらも、作者様の優しさに甘えてどうしても被害者の母が殺人者にならない世界も夢想してしまいます。
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