「グッドナイト、アイラブユー
」のレビュー

グッドナイト、アイラブユー

たらちねジョン

作者買いです

ネタバレ
2026年8月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「アザミ城の魔女」で作者様の絵柄に惚れて、こちらも購入。

最初は父親、次に10歳年の離れた兄が理由も言わず出ていって、残された母と2人で懸命に生きてきた主人公の大空。父や兄からは連絡がないまま大空は20歳になり、突然母が余命3か月だと知らされます。大学を休学し必死に看病するも、最愛の母を看取った大空は、人生に数回あるかないかの巨大な節目に身を置いて、真っ暗闇で突然手を離された子供のように見えました。

大空に感情移入して読んだので、最初は心がギューッと固まっていくような感覚があり、読んでいて苦しかったけれど、旅をする中でその頑なな心が少しずつ解れていって、旅が終わる頃には生まれ変わったように世界が輝いて見える感覚も味わえました。
大空がどういう人間なのか、本人の心情描写と共に、周囲の人物達の描写からも浮かび上がる構図になっていて、より分かりやすく感情移入もしやすかったです。

登場人物達一人一人に物語があり、それは正しい訳でも間違っている訳でもなく、全て等しく価値あるものとして、私の目には映りました。この作品を読むと旅をしたくなるのはもちろんですが、人生という旅路はなんて儚く美しいんだろうと、実際に旅に出なくても日常への愛おしさが溢れて満たされます。

3か月の余命を病院のベッドの上で過ごしながら、ヤエさんは一つ一つ執着を手放していって、最期には本来の自分を取り戻し、愛に包まれながら安らかに旅立っていったんだなと思いました。
残された者たちは、新しい家族のカタチで、これからも愛に溢れる日々を送っていく。そんな彼らを見守るヤエさんの優しい気配を感じる素敵なラストでした。
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