天は赤い河のほとり
」のレビュー

天は赤い河のほとり

篠原千絵

名作

ネタバレ
2015年8月26日
このレビューはネタバレを含みます▼ 歴史ロマン。
設定は昨今よくあるタイムスリップもので、主人公周りの設定はほぼフィクションですが、時折史実も交差し、資料がほとんど残っていないヒッタイトという幻の帝国の動乱・行く末を遺跡などから導いた解釈にファンタジーを混じえ、古代エジプトやトルコなどのオリエントの歴史や生き方を感じられる作品になっています。

「わたしの生きる天はこの赤い河のほとり」
がまさしく名場面。
生きる覚悟というものをこの文章と絵でシンプルにこれ程までに表現できるのが凄い。
タイトル回収というメタ的に熱い展開というのも忘れるぐらい響きます。

少女漫画としてのラブストーリーと少しエッチな展開も豊富で、とにかくカイルの王としての資質が、戦略的な冷酷さを併せ持った民を想う心に戦士としても強靭な強さ、一緒に並び立つ象徴としてだけでなく一人の男としてユーリへの一途な想いが素敵です。

反してユーリに対してはたまにイライラする場面はあります。
この作者の描く主人公は、一人でムチャして問題が大きくなるパターンが多いですが、とりわけユーリはその中でも筆頭の問題児で 笑
しかしそのおかげでストーリーもやはり大きく動いていき、キャラを描くのがうまいなぁと感心します。

最後の史実をなぞった物悲しい終わり方も良い。
ファンタジーあり、サスペンスあり、ラブストーリーあり、戦争と外交の歴史あり、壮大なヒューマンドラマです。
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