「チ。―地球の運動について―
」のレビュー

チ。―地球の運動について―

魚豊

地。血。知…無限の「チ。」

2026年10月3日
今では当たり前の地動説。中世ヨーロッパにおいてそれを研究することがどんなに無謀だったのか。それこそ「地球がひっくり返る」大事件だった。
地動説の研究に関わった人間の何人かは命を落とす。しかしその研究、触れた人間の感動は確実に後進へと引き継がれていく。文字の力を借りて。「文字って奇蹟ですよ」という言葉通り、言葉・文字を持つ人間は知性を持ち、無限の可能性を秘めている。

歴史を描いたともいえるし、哲学的な話とも言える。
現代においてもそのまま通用する言葉も多い。裏表紙には印象的なセリフのいくつかが書かれているけど、正直、足りない!アレもコレも入れてくれ、と思う。それくらい、絶妙なタイミングに出てくるセリフの数々がまっすぐ心に飛び込んでくる。
バデーニがオクジーに赦しの秘蹟を与えるシーンには心が震えた。緊迫のさ中、場違いなほどの厳かさ。バデーニが行うからこそ意味のある秘蹟。

作者は神を肯定したいのだろうか、人間を肯定したいのだろうか。疑問を抱えたままストーリーは進み、読み手は必死に考え続ける。そして神の存在と人間の知性とは両立する、との結論に達する。むしろそれが本来であり、どちらかを放棄するものではない。

もっと早く読んでおけば良かった…と思う本はたまにあるけど、これは数少ないそんな本の一つ。
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