あれよ星屑
」のレビュー

あれよ星屑

山田参助

傑作!

2015年9月2日
終戦直後の混乱を生き抜く人達の話。メインは軍隊時代の上官と部下の2人の男。焼け野原の東京で偶然再会し、いつしか相棒のような存在になっていく。この作品、とにかくリアル。あの時代あの場所を、まるで見てきたかのように描写していく。
ゲイ雑誌出身の作者さんらしいけど、BL的雰囲気や男同志の艶めいた物は今の所全く感じさせません。出てくる人物達はみんな、男所帯の気安さかかなりあけすけ。下ネタばっか。女たちもかなりのもの。生きるってことは食べて排出する、あとはとにかく性行為するってことなんだろうな。進駐軍の残飯漁ったり、慰安婦のヒモやったり、中国・朝鮮人とやりあったり、ヤクザの世話になったり…とにかく最近はなかなか描けないのでは?と心配してしまうような話が目白押し。敗戦とはこういうことか、と考えさせられる。明るいタッチなのに、人びとはみんな傷を抱えていてどこかに影が、重苦しさがある。主題というかストーリーはこれ!というものはなくて、戦後と戦中のエピソードを重ねていくことで2人の心の傷が浮き彫りになっていく。当時の濃密な空気感がひしひし伝わってきて、早く続きが読みたい作品です。
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