アリーズ
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アリーズ

冬木るりか

この作者がノリに乗っていた時の傑作

2016年11月26日
この頃の作者は、つくづく、勢いがあったなと感じます。この作品自体にも、そうした作者の絶好調期に描かれているパワーのようなものを、やはり何かと感じますし。
そしてギリシャ神話好きな人とか、壮大で不思議要素のある話が読みたい人にはお勧め。
ただ、この話ではゼウスが敵役になっており、神話では地味な冥王夫婦の方が、主人公になっているのが斬新です。特にゼウスなんて、初期の頃は狡猾な策略家のような感じでしたし。
ストーリー展開にも淀みがないし、愛憎・謀略・野心渦巻く、複雑な神々の人間関係も、大変に読み応えがあります。私は今でも、十分に面白い作品だと思うのですが。
その壮大な設定とか展開など。まさにロマンチックかつドラマチックと言って、いいのではないでしょうか。壮大な設定にばかり終始しがちで、肝心のキャラ達の個人的な関わり部分は、おざなりになりやすかったり、逆に壮大なのは設定ばかりで、その中心にあるのは、実際はキャラ達の、ごく個人的な動機だったに過ぎないなどの、閉鎖的な世界観の話も多い中、その点、この作品はバランスが良いように思います。そして私としては、やはり、一時ゼウスがいなくなり、7巻から本格的に、まさに凶悪・邪悪の化身という感じの暗黒神ディオニュソス登場くらいから、一気に緊迫度・戦いの激しさが増し、ストーリーに大いに弾みがついていくように思います。
ベルセフォネーに関する設定も、よく練られているなと感じましたし。
彼女がなかなか記憶を取り戻さない理由及び、彼女を手にする者は、世界を手にするかのように言われてきたのは、一体何でだったのかなど、納得できる理由が用意されていましたし。
これら伏線が全てきちんと生かされていた、完成度の高い話作りになっていると思います。
実際に当時、かなりの人気があったと思います。アニメ化も、CD化もされていますし。
確かに特にこの作者のこの作品は、女性達の方が特に印象的で、戦うお姉さま系の女性と女性要素が強いタイプと分かれますが、総じて魅力的な女性が多いように思います。
それから私も肝心のべルセフォネーは、少し苦手でした。
いかにも典型的な昔の守られヒロインという感じで。
確かにこの作者、ヒロイン自体の造形は、あまり上手くないような。
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