闇のダリウス、光のザンダー Ⅰ 愛にむせぶ白鳥
」のレビュー

闇のダリウス、光のザンダー Ⅰ 愛にむせぶ白鳥

キャロル・モーティマー/桜屋響

強く前向きに生きる姿が彼の眼を引き付けた

ネタバレ
2017年1月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ 出会いからずっと彼はヒロインのことが気になり、絶えず誘いを。ヒロインは彼の本気を疑い、期待の余地なくかわし続けるも、魅力を感じる彼からの積極的な押せ押せアプローチ、結局断りきれない。
姉の酷評(彼への)はヒロインには影響しない。
一目見て互いにそれぞれ好感を持った二人、後から彼が気に入ったところを説明が付け加えられるが、私はこれに違和感を持った。
それは確かに、相手のいいところを見つける、という大事な発展段階かもしれない。ヒロインに一回お相手を、と願う下心で始まるストーリーが、そっちのアピールでないところにも彼の関心が広がっていくのは、ラブストーリーとして骨太になる。
だが、遠目に見て言葉を交わしたりする前にすでに好感を持つところから入ったとき、驚くほどグイグイ来た彼のスピード感が、ヒロインが待たせたからではなくて、足踏み。
それはそれなりの理由はある。
二人にはそれぞれ辛い過去がある。周りと難しい関係がある。厳しい現実とある意味戦っている。
それを百歩譲っても、心ひかれるがままに親しさを増していく流れは、物語の始めからの、昨日までの他人がその日の内に一気に二人で話をするまでに至る一直線が気持ちよかったのに、一杯要素がありすぎ散漫になっていく。
なんとなく、物語に詰め込まれているものが説明で片付けられた感じで終わる。本人の感情の推移が、言葉で進められてしまう。

それから、HQにはありがちだが、このタイトル付けも残念な気持ちになる。兄弟シリーズにしたいのだろうか?
この話はダリウス主体、その一方で、ザンダーも、というにはザンダー絡みの話も主役級のストーリー性がある。兄弟のどちらにもその背景に膨らみがありながら一冊に収めること自体が困難に見える。
どちらが光でどちらが闇か、その二面性の区分さえ、タイトル通りに受け止めきれないものがある。
このうえ、ヒロインの事故の真相に関するストーリーも抱え、恋愛シェアの相対的低下に、何を読みにいったかわからない、という気分だ。
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