残酷な神が支配する
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残酷な神が支配する

萩尾望都

愛と死と再生の物語♦

ネタバレ
2017年1月31日
このレビューはネタバレを含みます▼ ガールフレンドもいる健全なアメリカの少年ジェルミが、壮絶な地獄巡りを経て人生を取り戻すまで。。。サスガ巨匠萩尾センセ👑 とてつもない『愛』のドラマに仕上がってます♦
15才の少年を罠にハメる義父の卑劣さと怪物ぶりに、身の毛もよだつ思いで3巻まで読み、母親のあまりの愚かさに目眩を覚え、あまりの辛さにラストを読んでから、全巻読了致しました📚  4巻以降、ジェルミは母親が知っていたコトを知り、更なる地獄へ転がり落ちてしまいます♠ 彼の精神を引き裂き、バラバラにした諸悪の根源は、母親だったワケです💦
作中、ジェルミを愛してると告げるイアンに、ジェルミは『愛』が分からない、と答えます。そりゃそうですよ😓 たかだか15才の少年が、最愛の母親から人身御供にされてたコトを知ってしまったのだから、誰も愛せなくなります💦
このへん、もーツラい😓 ナボコフ『ロリータ』では、少女は逃げ出して自由を得ますが、ジェルミは殺人という形を選んで、自我が引き裂かれてしまう。彼を愛してるはずのイアンでさえ、どう扱っていいか解らない。。。4巻以降、義父と母親を亡くしてから、そんなジェルミを取り巻く人々もまた、様々な親子問題を秘めていたコトが描かれ、イアンとジェルミのストーリーも苛烈を極めますが、ようやく落としドコロへ2人がたどり着き、精神の崖っぷちで、再生への光を見るラストでした♦
歪んだ暴力から始まったストーリーは、死と呪いの森で迷路を巡り、遭難し、崖っぷちに留まるコトで、解決したのでしょうか?
この苦しみに、救いはあったのでしょうか?
登場キャラ全てに起こった、事件も苦しみも、愛も救いも、1度起こった事実は取り消しようのない、恐ろしい傷です。しかし、人につけられた傷は、また人と関わるコトで、形を変え、かすかにでも癒されてゆく。
ジェルミは生き残りました👑
親は子供にとって神、子供は神に捧げられた供物。。。作中、何度も語られたモチーフが、胸に突き刺さります。
願わくは、世界中で今も現実に起こっている、あらゆる暴力が消え、互いを思いやる人間固有の感情『愛』が、世界を満たしますように。
ジェルミにイアンがいてくれて、本当に良かった。
イアンもまた、ジェルミと共に愛を学び、愛を見つめて生きて欲しい♦
家族間の愛が薄れ、傲慢と無知と無視の罪があふれる現代、人間の原罪にまで切り込む、愛と死と再生の物語でした👑
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