心を殺す方法
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心を殺す方法

カシオ

愛情とは

ネタバレ
2017年5月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 最後まで読んでの感想です。
前半の感想では、光の春樹への執着は一方的な暴力で、そこに愛情は無いのだと思っていました。
でも他者からの愛情表現が精神的な暴力だった光にとっては、春樹に対する愛情表現があんな風になった理由も解らなくはない。
「優しくしたい。優しくされたい」と言って涙を流した理由はそれだったのかな、と思いました。
また、光を拒否出来ない、し切れない春樹の方にもやはり何となく執着があるように感じました。
一度は行方をくらませた春樹でしたが、光に見つけられてから逃げる事を辞めます。
箍が外れた様に春樹は自ら光を求め、二人きりの別荘で愛欲の限りを尽くす二人の描写を読んで、これは歪な愛の形なのかも知れないと思いました。
「俺なんか好きになったばっかりに」という春樹のモノローグが印象的でした。
結局、春樹は光を殺せず、極限の状況で縋った相手は英さんでも無かったという時点で、この物語の結末はココに落ち着くしかなかったんだと納得しました。
「割れ鍋に綴じ蓋」とでも言うのか、どこまで行っても光は春樹を忘れられないし、春樹もまた光を切り放す事は出来ないんだと思います。
「運命の相手」とは案外ロマンチックなものではなく、こういう痛々しいものなのかもしれません。
最後の最後で、それまでとは明らかに違う空気の穏やかな二人のやりとりを見て、これはこれでハッピーエンドなのだと思いました。
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