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ありがとう

山本直樹

問題作ではあるけれど

ネタバレ
2017年5月24日
このレビューはネタバレを含みます▼ 雑誌連載当時、暴力的な性描写や理不尽な暴力、何よりも醜悪なひとの姿に衝撃や嫌悪感を受け、かつどこかに惹かれて読むのを止められなかった作品です。
久しぶりに読むと、家族のずれっぷりや、それに気付かぬままもがく父親、無気力な母親、一番現実的に見えるけれど迷う娘(妹)の悲哀がより印象に残ります。

作品上のこととはいえ、彼らの悲惨な状況にあまりに無関心な警察や学校関係者はいかにもありそうで、現在でも通じるものがあるでしょう。

一巻を読んでの低評価が目立ちますが、最後まで読んでからのやるせなさと、からりとした謎の結末が癖になります。

一種の、家族を核とした現代文学であるのだろうと思います。

ただし、既存のレビューで触れられているように、いくつかの悲惨な事件がモチーフにされているようで、中学生以下にはお勧めできません。
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