黎明のアルカナ
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黎明のアルカナ

藤間麗

二回読んでほしい

ネタバレ
2018年2月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 一読目は分からなかったロキの心情で読むと、違った見方になった。例えば、9巻でナカバがアルカナを使い過去を覗いているときに、シーザを追うナカバに対してロキがにらむような表情をしているけれど、これはシーザに嫉妬しているのではなく、シーザに惹かれていくナカバに憎しみを抱いているのではないかと思った。砂に流したい想いはナカバへの憎しみ。

結局は、ロキが「最善を選びとった」話がこの黎明のアルカナという話なのかな。そうすると、1巻目の祝福のキスのくだりですら、ロキに思惑があったのでは(恋心ではない)と思える。ちなみに小説版を見る限り、ロキはナカバ以外のひとたちともそれなりに交流があった模様。そこでは、素の姿だったのかしら。

読後は本当にやるせない気持ちになった。ロキが死ぬにしても、もう少し何か救いの道があったのではないかと。母を目の前で惨殺され、その痛み苦しみ哀しみを誰とも共有できず、唯一大切にしてきた妹は、母を殺した国王の息子と惹かれ合うことが分かっている。小説版で描写がありましたが、少年時から差別に苦しみ、痛くつらい人生だったでしょう。なのに、最期もひとり。しかも、いつかアルカナで見るであろう妹を想ってのことば。どれだけナカバが大切なの…

物語としては、リトアネルのその後や、アデルとどのように和解したのか、ロキが指導した旧セナンの様子、亜人は人間を必要としたのか、などが描かれているとより良かったように思う。
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