天使禁猟区
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天使禁猟区

由貴香織里

説明不足と活かしきれない設定・伏線

ネタバレ
2018年2月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 結構、説明不足とか、回収できていない伏線も。特にアレクシエルとロシエル姉弟に並ぶ、最強の双子では?と思われるメタトロンとサンダルフォンとか。特にサンダルフォンの扱いが全体的に不憫。兄の方も、最後まで可愛い和みキャラのままで終わったし。元々彼らは、アレクシエルとロシエルに対抗する、重要な存在のはず。だから潜在的にメタトロンよりも強力な力を備えていたサンダルフォンを、十分に活躍させないまま退場させたのは疑問が残る。他にも、その相当屈折して、グロテスクでもあるサンダルフォンの、その精神やそのセヴォフタルタ=ライラへの愛や執着?なども印象的。兄のメタトロンは、無邪気な幼い子供の面しか持たないのに対し、サンダルフォンは子供の持つ強い自己中心性や残酷さなどの子供の暗黒面も備えている。それにこちらのサンダルフォンの方が兄のメタトロンよりも、早熟。セヴォフタルタに対して「僕は僕なりに、君のことを愛しているんだよ」とか、子供とは思えない台詞を言ったりしている所とか。兄のメタトロンにとって、セヴォフタルタは自分を愛してくれる母としての存在だったのに比べ、サンダルフォンにとっての彼女は母としてだけでなく、女性としても愛し求める存在でもあったように見える。ただその愛が子供らしく、自分勝手で残酷だったが。狂気も入っているし。なお私が腑に落ちないと思う他の理由は、作者の嗜好からして、表面上は冷遇されたかに見えるサンダルフォンは、むしろ作者お気に入りの存在だったのでは?と思われるフシがあるから。自分はIチャイルドの王、有機無機含め、全ての天使がひざまずく、選ばれたものだと言う、子供特有の傲慢さや残酷さや自己中心性。一方、セヴォフタルタに迫る様子などの早熟な面も持ち合わせる。そして一見美しい青年の姿、実際はグロテスクな姿。諸々の要素、特にこのアンバランスさは、私はまさに作者の好む所だと思う。美しいものとグロテスクなものとの組み合わせも、好きなようだし。また作者は作品のバッドエンドも考えていたらしく、この新世代の天界の支配者になるはずの双子達も、それで扱いが変わったのかも。メタトロンの方も夫婦に拾われ、完全に天界では不要の存在になったことといい。それと紗羅が前世では兄の刹那とは女性同士で、天使であった必要性も謎。そしてたぶん、刹那と紗羅は死ぬと魂は前世の肉体に戻る。つまり、もう転生はないのでは?
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