百と卍
」のレビュー

百と卍

紗久楽さわ

満足できる江戸時代BLがとても素晴らしい〜

ネタバレ
2018年3月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ 久しぶりに胸に刺さるお話を読み驚きました。ポジティブなラブストーリーの中に辛く悲しいテーマを伝えてくる展開にやられました。隅々までこだわった情熱と、あの時代の男色と少年愛に焦点を当てた切り口が素晴らしいです。

当時は武士も庶民も今の時代でいうバイセクシャルがフツウで。少年愛は現代から見れば少年虐 待の様な風俗文化だから一部を覗くだけでも百達を思うと辛い。

陰間は低年齢が好まれ百が醒兄に手解きを受けたのは11〜12歳なのかな。ピークは16〜17歳とも言われるしその後20歳前には百の様に追い出されて、後家さん相手の男娼や作品にあった様な転職に。

百のその過酷な少年時代をグロさを抑えつつも、当時に忠実であろうとする描写に紗久楽さんの強い気合いを感じます。読めて良かったです。

百は長身で見世の人にも木偶の坊と言われお座敷も無かったとあるし、少女らしい男の子が望まれる陰間には不利できっと客からの酷い扱いとかもあったんじゃないかなぁ。華やかに見える十五夜や十六夜と百の対比もキツい。

卍兄に拾われ可愛がられてホント救われる。卍兄が嫉妬をみせて百の過去に踏み込んだシーン、あれで百も過去の決別が出来たかな。遊女の末路で憐れなのは精神崩壊らしいから陰間も同じだと思う。百は卍兄が丸ごと受け止めてくれるから引きずらないよね?亀さんの功徳がずっとありますように。

次巻は卍兄の過去と百との馴れ初めとの事で楽しみ。あの卍兄の溢れるお色気と愛情と二人の日常はまだ見ていていたいです。元は客と陰間で有名な弥次喜多コンビの様に百と卍の二人の世界を作り上げていただきたい。紗久楽さんの描かれる江戸時代で武将や歌舞伎やお寺の小姓や稚児などの話も読んでみたいと欲が出ます。

今まで遊女モノでも話は面白くても遊郭がエロいロケーションでしかなくあまりにファンタジックで冷めてしまう不満があったので、そこを見事に踏み込んだ忠実さが素晴らしいと思います。
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