女王の花
」のレビュー

女王の花

和泉かねよし

女王亜姫の壮絶な生き様。素晴らしいお話♪

ネタバレ
2018年3月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ 人物描写が丁寧で悪役達の表情や台詞にも想いを馳せる事が出来るので、読み進むほど引き込まれました。

名シーンはたくさんあるけど、一人の間者の死を見て慕っていた人の死に気づくあのエピソードは、聡明な亜姫らしさがとても出ていて印象的でした。

味方も学もなく何も持っていなかった亜姫と、金髪碧眼の奴隷 薄星が幼い頃出逢い千年の花を合言葉に支え合い、愛情を超えた深い絆で結ばれる展開は、二人が誠実で聡明なだけに切なく目が離せない。女王とか復讐なんてもういいじゃん!と思いながら見届けました。千年の花という自由の無い胡人達の願いと誓いの言い伝えは物語の主軸を支えていました。

毒殺された母が、優しさより恨みを穏やかな死より苛烈な生を、と亜姫に遺した意思そのもののストーリーは見事です。ラストから1巻に戻るとあのモノローグにまた引き込まれて。

母、亜姫、青徹、翠蝉、薄星などみんな相手が生き延びる事を願う愛情は美しくも辛く悲しく、あの不穏な世界でのいくつもの悲恋は心に刺さる。光の翠蝉への想い「生はあげられなかったから、死後は彼女のものに」これが各人の根底にある死力を尽くした生き方には感動。

最後の空っぽの部屋の亜姫が王として生きた姿は凛々しくも、トドメを刺された様で一番物悲しかった。女王として死にたくないという気持ちも亜姫らしく涙がでる。年老いた姿は手だけの描写で、再会は瑞々しかった頃の二人のラストシーンも納得です。辛いけど出逢えて良かった壮大なお話です。完結巻出てすぐ買ったのに何度か読んでもなかなかレビューが書けずやっと…。
いいねしたユーザ6人
レビューをシェアしよう!