このレビューはネタバレを含みます▼
お話も絵もとても綺麗でした。
語られるところと悟らせるところバランス良く。誰にも邪魔されずじっくり真夜中に読みたい切ない物語です。
他の方のレビューを見てこそ気付くこともあり、それぞれの読み手の終わり方があるような最後ですが
もし、バッドエンドに近い終わり方がトゥルーエンドだとしても私はこの作品の魅力だと思います。
ただ、もう一度司朗の手によって飛行機は飛ばされます。それが再び奇跡に繋がるのならきっと、2人が育てた畑が実る頃また幸せな時間が巡ってくるのだと思っています。
個人的に、決意した鴻の横顔と黙って去った鴻のその後を知り絶望する菊次郎さんの姿を想像するととてつもなく胸が締め付けられます。軍服の胸ポケットが縫い付けられていた?のは、そうなった後にも自分を分からなくするためだったのでしょうか…。
鴻に優しい優しい菊次郎さんだったからこそ、受け入れられなかったでしょう…
やっぱり2人を愛していたからこそ、鴻は今の幸せを手放してでももう一度帰ることを決めたのだと私は思いました。
それが司朗の家族の幸せに繋がるのなら。。
ここは人それぞれに解釈が分かれる所かもしれませんが、鴻の話してくると言うのは遺体として嘉山家へ帰ることを意味していると思います。
遺体を見ていないのだから認められなかった菊次郎さんは、鴻だと分かれば叶わぬ恋だったと思えるでしょう。
それも凄く切ない悲しい話ですが…
でも鴻は未来に希望を見つけています
我を通すなら菊次郎と結ばれるべきですが、大人として世間の目、人間として自分を養子として受け入れてくれた嘉山家の人達と何より菊次郎のための行動だったと思います。
何が正解かなんてないから切ないんですが
その結果を否定しない未来に司朗がいるんです。
今は辛く悲しいことも、未来のあなたの大切な人の幸せに繋がるから、と言う作品のメッセージだと深読みすることにしておきます。