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今月(11月1日~11月30日)
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シーモア島
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本年の大河ドラマに寄せて




2025年10月31日「よう、熊さん、調子はどうでぇ?」
「まあまあ、ってとこだな。ところで八つぁん、藍川京先生の『人妻狩り 絶頂玩具に溺れて…』はもう読んだかい?」
「読んだけっどもよ、こいつがどうもね」
「どうしたんでぇ?」
「いやぁね、いかがわしいからくり道具なんかを商う男が次々におなごを替えてまぐわう、という筋書きなんだがよ」
「ふむ」
「どうもうつつと思えねぇんでさあ。あんなあばずれども、お上に見つかりゃたちまち不貞罪でお縄とくらあ」
「そりゃあり得ねぇわな」
「それでいてよ、女どもの束ね役みたいな陽子というおなごがな、男のいちばんの目当てのはずがよ、最後まで何もなしで終わっちまうときたもんだ」
「肩透かしかよ。べらぼうめ!」
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ぼけ




2025年10月29日本作品はコスミック文庫から刊行の短編集「艶文」に収録されている(重複買い注意)のだが、収録作品に共通して言えるのは性愛小説の肝である濡れ場までの前フリが長いこと。それで値段は他の出版社からの短編バラ売りの倍額であるからコスパの点では競争力が劣ると言える。本作も主人公のイラストレーターが既婚の男とホテルに入るまで、あっちに寄ったりこっちに寄ったり。寄った先で寒更紗というのは木瓜(ぼけ)の異名であるとの説明までわざわざ登場人物の口を介して語られる。本作は収録作品の中でも前段が特に長く感じられ、持久走(=長編)ではないものの、400m走ぐらいはした感じ。陸上経験者いわく、実はこの距離が一番キツいとか。プレイも他の収録短編(カラミ描写の質の高さから平均以上の評価)と比べあっさりしている。肛門愛撫をされて本気で嫌がるヒロインは著者の作品の中では異色。これってプラス材料にはならないよね。
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のうぜんかずら、と読みます




2025年10月28日人妻の不倫ネタ。表題の凌霄花のほかに松葉菊、黄揚羽、杜鵑など、作品冒頭を様々な動植物が彩り華やかな出だしである。藍川ワールドに慣れ親しんだ読者にとっては一種安心の「ルーティン」。だけど旧函館区公会堂で出会った男とのやり取りまでは流石にToo muchだわ。会話の中身も一方が若い女たちにしてはイケてないし。無理して書かなくてもいいんよ。紙面稼ぎの寸劇とは言い過ぎか。さて、その男は時を隔ててヒロインのお相手を務めるわけだが、性描写はゆったり、かといって間延びせず、プレイの叙述は適度な濃度を保ったまま進んでいく。開戦に至る前奏部分をいま少し圧縮できればかなりの佳品となったかも。評価3.4999…。四捨五入して星3つ。さほどふしだらとも思えないヒロインが浮気に走ったのは男の言葉どおり、ダンナや過去の男たちが揃いも揃って下手クソばかりだったからか。なお、本作はコスミック文庫から刊行された短編集「艶文」に収録されており、重複買いに注意である。
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清潔感あるまぐわい




2025年10月27日前半の助走部分と後半の絡みが分断されている。体を重ねる相手の男と出会いに旅立つ動機が弱い。それでいてスジの展開は強引。著者の苦心の跡。相手の男はかつての知り合いの陶芸家。舞台は唐津。当地の店でその男の作品を買い求め、次いで入った呉服屋で同じ男がデザインした和服の帯をも偶然目にする。陶芸家が帯の意匠も手掛けるという地味ながら斬新な設定。で、いよいよご対面。それからなぜか痴話喧嘩のようなやり取りのあと、勢いそのままに本番開始。絡みの描写はさすがの充実ぶり。陶芸作品も着物の帯も作品を象徴しておらず、木に竹を継いだようなつくりだが、濡れ場は品よく端麗な筆致でクォリティを維持している。読んでいると、しっかりエ口いのだが下卑た感じはしない。これは白い帯の存在が意識の下敷きとなって色覚的なイメージを植え付ける効果によるものか。だとしたら、藍川京おそるべし。なお、本作はコスミック文庫から刊行された短編集「艶文」に収録されており、重複買いに注意である。
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焦らすのは女性登場人物だけにして




2025年10月21日大きな地震にバツイチヒロインが見舞われるところから物語ははじまる。揺れが収まってから家の中の物を片づけていると古い手紙が。書いた相手との再会から逢瀬に至るストーリー。ただ、プレイに入るまでが長い。いや、他の短編と比べて助走部分と本番との比率がとりわけ偏っているとは思わないけど、背景説明が延々と続いて完全に間延び。ヤマ場まで待たされ待たされ、焦らされ焦らされしているうちに読み疲れてしまった。ほんのわずかしか出てこない隣家の住人を実名で登場させる必要はなかろうに。焦らすのは大人のテクニックと、著者は様々な作品の中で男の口を借りて語る。が、読者をここまで焦らすことはないって。星は2.5以上3未満。四捨五入の結果3つに。なお、本作はコスミック文庫から刊行された同名の短編集に収録されており、重複買いに注意である。
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閨




2025年10月19日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。その十二に収録の「閨」につきレビューします。広い屋敷と体の渇きを持て余した女、それと屋敷の執事兼用人の高齢の男。ヒロインは25歳の社長夫人。夫以外の異性経験がないまま結婚し、そのためか、ウブさを残しつつ結婚生活を送っていた。その夫が長期出張で家を空け、夜間は家政婦も帰宅しヒロインと執事のみ。淋しさのせいかヒロインは就寝できず、執事を自分の寝室に呼び部屋を同じくして眠ろうとするところから事態は発展し・・・。半分ネタばらしになってしまうが、二人はSEχはしない。かわりに執事はヒロインにこれまで経験のない、オナ二ーを教え込んでいく。不意の夫の帰宅を気にする執事の心理描写は少々くどいか。反面、ヒロインのネグリジェからヘアが透けるという記述はグッとそそられる。
とはいえアンソロジー全体に対する評価はといえば、他の著者の作品を読んでおらず資格なし・・・っていうか全二十巻と源氏物語レベルの分量をすべて読破するのはご容赦を。ニュートラルの意味で星3つ。
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記念日の夜




2025年10月19日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。本書に収録の「記念日の夜」につきレビューします。結婚時は処女でまったくのウブだった人妻を、歳の離れた夫がだんだんとアブノーマルの世界にいざなう倒錯もの。表題の「記念日」とは主人公夫妻の結婚記念日のコト。その日を契機に初老の夫が、妻のもう一つの処女を奪うことを画策する。物語は二人の馴れ初めから説き起こされ、じわりじわりと清純な妻が夫の提案するプレイを受け入れるまでゆっくりと話が展開され読者を焦らす。倒錯とはいえ内容はソフトで、妻も新しい世界の入口に立つところでエンディングとなり、「変身」し切るところまでは描かれない。未知の世界への扉を開けた妻がこの後どう変わっていくのか気になるところであるが、アンソロジーに対する評価は他の著者の作品を読んでおらず資格なし。ということでニュートラルの意味で星3つ。
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寄り道




2025年10月19日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。本書に収録の「寄り道」につきレビューします。京都を訪れた三十路女。元カレを自死で失い罪悪感から古都を彷徨う。そこでの偶然の出会いからラブロマンスへと展開。邂逅から戦闘開始までの流れは自然な筆致で、プレイ内容も際立った倒錯シーンがないものの丁寧な描かれ方でじっくり読める。主人公は恋人が自ら命を絶ったことについて自責の念に駆られていたところ、徐々に苦悩から解放されて幸福を味わっていく。ヒロインが精神的に救われていくさまを見て、やなぎやこもほっこりした。これも成仏した恋人の導きか。読者も最後は幸せな気分になる。ではあるが、他の著者の作品を読んでおらずアンソロジーの冊子全体に対する評価資格なし。ということでニュートラルの意味で星3つ。
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掘り出し物




2025年10月19日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。本書のトップを飾る氏の「掘り出し物」につきレビューします。氏の著作の中では意欲作と位置付けれられる短編である。ネタバレ回避のため明かさないが、推理小説家顔負けのエンディングに著者の引き出しの多さを知ることになる。
主人公は質屋を営む中年男。ヘルプのホステスとの一夜の逢瀬が描かれている。変化球は結末だけではない。首尾よく結ばれた相手の女の体には・・・。とにかく意外性盛り沢山の構成にやなぎやこも刮目。但し、である。他の著者の作品を読んでおらずアンソロジーの冊子全体に対しては評価資格なし。ニュートラルの意味で星3つ。
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もっと深く




2025年10月19日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。本書に収録の「もっと深く」につきレビューします。寡婦暮らしが長くなった未亡人が性欲を持て余し、ついに過去の男のもとへ。直球過ぎて身も蓋もないようなタイトルから想像したとおりのハードプレイ。でも中身は小道具が出てくるぐらいでノーマルの域。まあ純粋に読んで楽しんで下さいな。とはいえ、本アンソロジー全体に対しては、他の著者の作品を読んでおらず評価資格なし。ニュートラルの意味で星3つ。
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京都巡り合い




2025年10月19日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。本書に収録の「京都巡り合い」につきレビューします。三十代後半独身美女のラブロマンスで、京都での年下の男との邂逅から営みに至る描写が実に丁寧で、プレイの内容も愛情に溢れるもの。ただ、あえて注文をつけるとすれば、ヒロインの立ち位置が、作品の最初で絡む年上の男を待ついじらしい女と、京都で出会った年下男をリードする女豹と複雑であり、その二面性をもっと深く描き分けられるとなお良かった。とまあ、色々書いてはいますが、他の著者の作品を読んでおらず評価資格なし。ということで、ニュートラルの意味で星3つ。
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鏡草




2025年10月19日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。本書に収録の「鏡草」につきレビューします。主人公は高校を卒業してすぐ結婚した美貌の人妻。京都を舞台に、かつて自分の教師だった男との道ならぬ恋が展開する。結婚後もなお身持ちの悪い夫に見切りをつけ、自分から教師にコンタクトし、宿泊先のホテルまでついていき、誘惑する。プレイ描写も教師の立場を気にして積極的になれない男に、女が猛然と仕掛けていくほどのタフネスを見せる。若いながらも欲望をむき出しにする主人公の性豪ぶりがテンポよく描かれ小気味よい。一方で肛門愛撫はないが、ストーリーの流れや、どこか清純さを残す十代の主人公の性格を勘案すれば、むしろその内容で良いことが一読しておわかりいただけるだろう。特筆すべきは、ほぼ全編を通じて男女のお互いに対する愛情が溢れ、美しく仕上がっていること。とはいえ、他の著者の作品を読んでおらずアンソロジー一冊に対する評価資格なし。ニュートラルの意味で星3つ。
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女梅雨




2025年10月19日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。本書に収録の「女梅雨」につきレビューします。高齢の書道家の弟子にして不倫相手だったアラフォーヒロインが、師匠の没後、欲求不満でいるところに書家の孫に出会い、物語が展開する。その後の運びは性愛小説お決まりのパターンだが、随所にこれまでの熟女vs年下男との構図にない試みがあり、大いに満足のいく一篇である。ありがちな、年上女性が遊びで相手を誘惑するというものではなく、肉欲と大きな年齢差という現実との狭間で葛藤するヒロインの揺れ動く胸中が詳らかにされ、このスジ展開が徐々に読者の気持ちをかき立てていく。そして、幸せなクライマックスへの一気に繋がっていく展開は、著者の高い文章力、構成力を感じさせてくれる。ただ、他の著者の作品を読んでおらず評価資格なし。ニュートラルの意味で星3つ。
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花言葉




2025年10月18日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。本書のトップを飾る氏の「花言葉」につきレビューします。「いちどだけでも抱いておけばよかった」。主人公の男のボヤキからはじまる本短編は特に凝った設定もなく、果たして一度抱いておきたかった相手の女との思いを遂げ、時を隔てて再びの邂逅に至る筋書き。その過程で惜しみなく様々なプレイが散りばめられている。奇を衒った過激な性描写もなく、素直な筆致が丁寧に重ねられていて好感が持てる。タイトルにある花言葉も、やや唐突ながら出てきます。何の花かはお楽しみ。本作は美しくしっとりとした仕上がりではあるが、他の著者の作品を読んでおらずアンソロジー全体に対する評価資格なし。ニュートラルの意味で星3つ。
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鬼縛り




2025年10月18日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。本書のトップを飾る氏の「鬼縛り」につきレビューします。タイトルから一瞬、浅間山麓の鬼押し出しを連想したがさにあらず。舞台は箱根。では鬼縛りとは・・・ググってね。マッサージ師をはじめとする男たちと複数の美女とが織りなすロマンスだが、亂交とはならず、短編という限られた空間に下品にならず濃密なプレイが詰め込まれている。初っ端はマッサージからSEχに突入するわけだが、ちなみに、これのパロディ版が「美しくもミダらに」(←入力制限でカナだが、実際はみだらは漢字)といえる。本作に戻ると、作品のクォリティは高い。が、いかんせん出てくる男たちがいずれも年寄り。もうちょっと若い方が作中の女たちも喜ぶんじゃなかろうか。さて、アンソロジー一冊に対してとなると、他の著者の作品を読んでおらず評価資格なし。ニュートラルの意味で星3つ。
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薔薇色のワインを




2025年10月17日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。本書のトップを飾る氏の「薔薇色のワインを」につきレビューします。主人公は既婚の熟女。実はプリアモリー(複数の異性を同時に本気で愛する特異精神体質)の気があり、独身時代は真面目に二股をかけていた。さて結婚して幸せ平凡な家庭生活を営々と続けるかと思いきや、マンネリ化した夫婦関係から夫以外の男と道を外す。最初に連れていかれた場所はSMクラブ。そこでのショーを見せられ、主人公に流れるアブノーマルの血が目を覚ます。かくして不倫相手と二人きりになってからも、男主導ながら自らも当事者となり倒錯プレイ続行。表題でもある薔薇色のワインを、さてどうする? まあ、あの程度ならノーマルの域か。実際にやってる夫婦いそうだし。けれど、他の著者の作品を読んでおらずアンソロジー全体に対する評価資格はなし。ノーマル、もといニュートラルの意味で星3つ。
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狐の嫁入り




2025年10月16日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。本書のトップを飾る氏の「狐の嫁入り」につきレビューします。主人公はバーのママで、水商売ながら身持ちの堅さを自負している。で、結局は客の男とデキて躰を開くのだが、作品の出来という点では、やや間延びしたものとなっている。絡みのシーンは長くとっていて、性愛小説のファンにとっては高いポイントとなろうが、それでも単調という評価は免れまい。このアンソロジーの題名は「戯(そばえ)」。これが短編の中では「日照雨」と書いて同じ読み、転じて同じ天気雨を指す「狐の嫁入り」について男女が言葉を交わす場面が出てくるが、これも取ってつけた感あり。さて一冊のアンソロジーに対する見方であるが、他の著者の作品を読んでおらず評価資格なし。ニュートラルの意味で星3つとする。
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雪の肌




2025年10月15日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。本書のトップを飾る氏の「雪の肌」につきレビューします。雪の肌の持ち主とは? 物語は主人公の男と若いホステスとの絡みで幕を開けます。このおネエちゃんが子供っぽく書かれていて、こりゃ青臭い水商売女相手のハナシで終わるのかと、自分の趣味でないスジに萎えかけていたところ、後半登場のマダムによって作品の性格は一変する。そう。こちらがメインである。そこからはまさに氏の筆グセともなっている「ねっとり」とした描写が、真打ち熟女の雪の肌を舐めるがごとく長く続く。読み応えあり。されど他の著者の作品を読んでおらず評価資格なし。ニュートラルの意味で星3つ。
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代理人




2025年10月13日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。本書のトップを飾る氏の「代理人」につきレビューします。代理人とは? それはヒロインの社内不倫相手が海外赴任することになり、代わりに愛人の躰の渇きを慰めるためというまことにお節介な考えで不倫相手が推挙した男のこと。ヒロインは代理人と会うが、すぐに開戦とはならず、ヒロインは一度帰宅するなどして読者を焦らす。これが決してダラダラとならず、ほどよく読者の気分を盛り上げる効果となっている。そしてようやく一戦に及ぶが、プレイ内容も盛り沢山かつ情感たっぷりの大人のSEχが演出されていて佳作と言って良い。だが、他の著者の作品を読んでおらず評価資格がないため、ニュートラルの意味で星3つ。
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隠れ家




2025年10月13日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。本書のトップを飾る氏の「隠れ家」につきレビューします。美しい鎌倉の情景をバックにかつて交際していた男女が再会し、そして合体。既婚の女の方から夫婦の営みが冷めたことを理由に元カレに接近するというわけだが、パターンとしては氏の作品に頻出する設定。プレイ内容も悪くはないが特段際立ったものはないな、と思って読み進めていると、ストーリーは唐突感をもって倒錯方向に舵を切る。逢瀬の舞台ともなっている男の自宅兼事務所に、奥さんが不在で美人秘書(ご想像通り途中で”参戦”)がいる設定もやや不自然で星は3つとした。だがそれ以前に、他の著者の作品を読んでおらず評価資格なし。ニュートラルという意味でも星3つとする。
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女陰塚




2025年10月13日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。本書のトップを飾る氏の「女陰塚(ほとづか)」につきレビューします。異次元妖異譚である。むかしむかし、ではなく現代のある所に、女陰塚と呼ばれるスポットがあったとさ。塚じたいが「こんもりと盛り上がった場所」の意で、すでに何やら異空間への扉ともなる女体の入口を連想させる。そう、恥丘、はたまた本書「溢れて」のカバーのように。詳細はあまり書かないことにするが、読んで普通に面白い。会社の同僚の使嗾に乗ってワンダーランドに踏み込んだ主人公の男は、そこで竜宮城で接待される浦島太郎のようにご馳走を受ける。あ、料理も出てくるけどメインはアッチの女体盛り方のご馳走ね。当地のしきたりを知らされた主人公は、かくして来たるべき日の再会を約して女陰塚を後にし異世界より帰還する。終わり方は清々しくさえあるが、姉妹二人と相次いで交わるプレイ描写も充実していて高評価。
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叔母の時計




2025年10月13日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。本書のトップを飾る氏の「叔母の時計」につきレビューします。ヒロインの亡き叔母の形見の腕時計が繋ぐ縁で出会った男。それは故人の思い人だったという設定。叔母も配偶者持ちであったが、甘酸っぱい大人の関係にも足を踏み入れていたことをヒロインは知らされる。であるが、文章には不倫につきまとう暗さは一切なく、分別を保ちつつ逢瀬を重ねる当事者ふたりに成熟した奥深さを見て、ある種の安心感をおぼえる。それでいてヒロインがプレイに入るや、描写は質・量ともに十分。大人になったヒロインが垣間見る大人の世界を背景に繰り広げられる濃密な性宴。楽しめます。
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薔薇と女豹




2025年10月12日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。本書のトップを飾る氏の「薔薇と女豹」につきレビューします。ヒロインは金も地位もあるいい年の男の愛人という設定。一軒家を買い与えられたのどうのというやり取りの末、若い男との愛人公認のもとでヤる。このレビューの書き方でおわかりの通り、ストーリー運びに趣向も工夫もなく、前後して二人の男とヒロインのプレイに終始。そのぶん性描写は長めで、これはこれで楽しめる。但し題名にある薔薇の存在感少なし。設定に苦心の跡あり。
恐縮ながら他の著者の作品は読んでおらず評価資格なし。ニュートラルの意味で星3つ。
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好きにして




2025年10月11日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。本書のトップを飾る氏の「好きにして」につきレビューします。交際相手の男に飽きられたか、SEχもマンネリ化し、逢瀬が惰性化していたある日、男は主人公との時間もそこそこにホテルの部屋を出る。主人公は他の女の影を感じ取り、やがてそれは的中する。前半部はこんな感じで営みも描かれているがゴタゴタダラダラ。おいおいこれで終わるのかと思いきや、以上の経緯から怒ってばかりいた主人公に新たな出会いが。かくして至極順当にベッドイン。そこからの展開が濃密で充実している。かくして身もフタもない表題の短編が思わぬ良作と知る結末となった。
恐縮ながら他の著者の作品は読んでおらず評価資格なし。ニュートラルの意味で星3つ。
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平均すれば




2025年10月8日上記、「作品内容」に記載の短編からなる作品集。どんじりに控えし「クララ」以外に対してはすべて、やなぎやこが各個別作品のページでレビューを寄せているのでご興味ある方は面倒とは思うがご訪問を。さて、ここでは唯一バラ売りされていない「クララ」についてコメントする。普段強気で通っているヒロインがふと出会った男に対して、勝ち気でも何でもない本性を露呈しつつ躰を重ねる筋書き。人間の描き方は丁寧な反面、SEχの描写が淡白な上、ヒロインの工クスタシーに至る前に幕となる。対照的なのは最初に収録の「今夜は感じすぎるの」。ヒロインの境遇に関する描写は、まあ藍川ワールドにおいてよくある話。だが、いざ一戦が始まるや、その内容は出色の充実ぶり。以上を総合して、一冊の短編集として評価を平均すれば星3つ。
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手堅く




2025年10月8日以下の短編を収録した作品集。やなぎやこは個々の作品にレビューを書いているため、ご興味ある方はお手数ですが各作品を訪っていただきたく。さて一冊の作品集として俯瞰すれば、各作品とも出来が手堅い反面、無難にまとまってしまった感あり。外れは、ないと思う。ただその一方、過去の既出作と比べ突出した傑作もない。ために星3つ。その中でも異色あるものといえば、「トリプルルーム」か。助走ともいえる背景説明を大きく削り、足早にプレイに突入する。
・白梅一輪
・森の妖精
・甘肌の香り
・戻橋情炎
・魅入られて
・トリプルルーム
・京都巡り合い
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消化不良




2025年10月5日あらすじは上に書いてある通り。かくかくしかじかのストーリーが展開する過程で師匠とヒロインの媾合が繰り返され、師匠の懇意の画家が登場し、間に「箸休め」のごとくヒロインの妹と師匠のSEχが設定されている。形式上の説明は以上なのだが、評価は星2つといったところか。まず、師匠に近づくヒロインの動機が今ひとつ弱く、半端な臨場感。それでも最後にヒロインの満願成就でめでたしめでたしの完結、となれば良かったところ、師匠に取り込まれて屈服する結果で後味悪い。ヒロインの出身元の流派の跡取り、ヒロイン妹など多くの登場人物の思いが置き去りになってしまったまま尻切れの結末。プレイ内容も際立った工口さがなく平凡の域。
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かいがいしい内助の功




2025年10月5日上記のあらすじの経緯を辿り、会社が倒産した夫のために自らの体を権力者のお偉いさんに差し出す妻。落語の「芝浜」に出てくる奥さんにも引けを取らない賢婦ぶり。かくして商談成立。あとはお偉いさんとの「契約履行」の数々のプレイ描写が続出。筋書きは多少の差こそあれ、著者の他作品にも少なからず使われているパターンだが、やなぎやこは以下の2点より、本作を高く評価する。
① 話の展開が高密度で盛り沢山。性愛小説として楽しみたい向きには嬉しいつくり
② お偉いさんとの逢瀬を重ねるうち、奥さんも半ば強制的なやらされ感を持っていたのが、やがて、まんざらでもないといった心境に変化する。また、ギスギス気味だった夫婦の仲もラスト近くに回復し、まずまず幸福な読後感
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濡れ場が少ない。けれど。。。




2025年9月27日短編の中でもさらに比較的短い9編を収録した短編集。特徴はいずれも性描写があっさりしていて量的なボリュームも限定的、あるいはさあこれからはじまるぞというところで終わっている。性愛小説である以上、通常であれば物足りない、という感想になるのだが、本作品集では、それぞれの主人公の心理が精密に書き込まれ、ほどよく抑制のきいたところがかえって上品で物語性の強い仕上がりとなっている。そのためこれはこれで高く評価したい。ただ個人的な好みを差しはさむことが許されるならば、7番目に収録の「戻り梅雨」が筆運びが単調で見劣りするか。ために星は3.5としたく、四捨五入しての星4つ表示である。余談ながら、本短編集は3番目に収録の「花雫」と同名かつ取合せも全く同じ作品集が2000年2月に実業之日本社から刊行されており、重複買いに注意である。
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日本の田舎のエマニエル




2025年9月27日本作は1997年に富士出版より刊行された「新妻の疼き」を改題したもの。重複買いご注意。ヒロインは自身が卒業した大学の職員で、美貌と知性を兼ね備え、さらに男性経験のない生娘ときた。男たちにとり、まさに高嶺の花の女が同じ大学の教員と慌ただしく結婚させられ、夫の里の奇妙なしきたりに嵌められ、性に目覚めていくという筋書き。さて、清純な存在として描かれたヒロインが「エマニエル夫人」化していく過程だが、最初は当然男女の営みを躊躇する。はじめはゆっくりだが物語の最後に向かって「完成」されていく部分が、第4コーナーを回った競走馬のようにせっかちに展開する。そのためせっかく期待のシチュエーションでも読んでそそらない。「聖女」から「性女」への変身プロセスは、均等なペース配分であって欲しかった。ヒロインのキャラクターも今ひとつ固まっていないなという感想である。
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暗き男の情念




2025年7月20日主人公の彫刻家は過去に愛する女性を失い、その桎梏を抱えながら作品を世に生み出し続けている。そして出品作がある老人の目に留まり・・・ここから藍川ワールドのはじまり。老人の正体、連れの美熟女の素性、二人の来歴は問うまい。それがワールド住人のお作法なり。この著作、相手熟女の描き方に特に力が入っている。著者の小説で数えきれないほど使われている「ねっとり」という形容がまさにふさわしく、成熟した女の色香が体臭とともに、己が鼻まで実際に届いてきそうな臨場感を醸す。しかし、である。何か足りない。ああそうか。老人が自分の女(妻?愛人?)を差し出す動機がいまひとつ不明。ここは描いてほしかった。迷った末に星は2つとした。
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ケーキとステーキと寿司の寄せ鍋




2025年6月26日本作は1998年に日本出版社から刊行された「鬼の棲む館」を改題したもの。よって重複買いにご注意。初期作品に分類されようが、ちょっとこれはいただけない。18歳の女子大生が高額の報酬にひかれて素性も定かでない老人の居住する屋敷に住み込みでバイトに入るが、待っていたのは若い女には受け入れがたい性冒涜のオンパレード。とても書き切れないし、文字もシーモアのコードに引っかかるような記すも憚られるプレイの連続。犯罪だっつうの。流石に現実離れしていて感情移入できない。シーモアのあらすじ書きでは、米国駐在のはずの主人公の彼氏が屋敷にいた、とあったが、やなぎやこの想像と大きく異なるかたちでの再会。これも含めて後味悪い。主人公はありとあらゆる責めを受けるが、作品全体がまとまりを欠き、詰め込み過ぎの印象。いかな高級料理でも、寿司やケーキをごった煮で出されて美味いと感じる向きはあるまい。
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現代の羽衣伝説




2025年2月3日高嶺の花と思っていた美しい淑女が、ひょんなことをきっかけに手の届くところまで下りてきた。羽衣こそ出てこないが、相手の女性は伝説の天女さながらの天衣無縫ぶりで、熟女らしからぬ恥じらいとたおやかさをガテン系男との絡みのなかで表す。まさに殿方の夢。物語では実際に、未亡人になってもなお深窓の令嬢という設定で、主人公の男はある日を境に、女の身内により逢瀬を阻まれる。我慢して我慢して居場所を突き止め追いかけて、そして・・・。焦らされた果ての再会も男の欲心をくすぐる快作である。なお本書は表題作の他に、「大揺れエクス夕シー」なる短編も併録されているが、これはあっけらかんとしすぎでフィクション性が強い印象。以上勘案して星は三つ。
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悪くないけどね




2025年2月3日和服の未亡人が久しぶりに男と肌を合わせ、目下の欲求不満を解消し渇きをいやす。登場人物いずれもハッピー。大いに結構。男女が一戦を終え、シャワーを一緒に浴びたりと、女性にとっては嬉しいと感じる手厚いアフターフォロー。このアフタープレイ描写の充実さが本作の特長。ただ難を言えば、ヒロインの出身である九州ことばがここでは読者の気持ちをクールダウンさせる方向に作用すること。いや、わかりますよ。その土地土地の人々がみな標準語でよがるわけもないし。でも、性愛小説にコテコテの訛りは違和感しかないですよ。たとえはんなりの京都弁であっても。内容の充実度で星3つ。標準語だったら4つでもよかった。
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「深雪は私にとって『も』菩薩だった」




2025年1月12日高名な美大の教授が逝き、残された年の離れた未亡人を、弔問に訪れた弟子筋の教員が自分のものとすべく挑む。これには、故人である教授の遺書ともいえる教員宛ての書簡に妻の後事を託す旨が記されていることが伏線となっており、それに導かれるように二人は肉体を重ねる。そして書簡には、未亡人の特徴的な性癖が付言されていた。それは・・・ネタバレ回避させて頂くが、亡くなった男よりはるかに若い未亡人が着物姿で、故人ゆかりの男と繋がる筋書は著者の鉄板の展開だが、本作はそれがマンネリに流れず、純、静、美といった長所的要素が色濃く感じられる良作である。亡き教授は書簡の中で告白する。「深雪は私の菩薩だった」・・・読者もまた、たおやかな女盛りのヒロインに観音菩薩のような慈悲の心をみるのである。
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繰り広げられる性愛曼荼羅




2024年12月22日藍川女史初期作のなかでも異色の宗教団体が舞台の長編。いちおう仏教の一宗派といった形態はとっているが、布施だの供物だのと称して女体を教祖様や幹部信徒たちが貪りつくすというあらすじ。もともと原始仏教も男女のまぐわいを表現した像や宗教画が多いが、本作で展開するプレイは倒錯を織り交ぜた俗悪きわまりないもの。それでもおどろおどろしい彫刻や催婬効果のある香木などのガジェットにより婬靡な雰囲気を堪能できる。なお、表題の母娘のお母さんの方、自宅での旦那との絡みはちょっと不自然だよ。それでも星三つはあげられる(レビューの入力制約により置換しているが、上記「婬」の字の扁は、実際には ’さんずい')。なお本作は、1991年に成瀬純のペンネームで刊行された「母娘秘祭 隷の輪舞」を改題し、現ペンネームで再刊行したもの。重複買い注意。
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⤵




2024年6月22日本作はフランス書院より1993年に刊行された「稜辱秘書室」(※)の改題。よって重複買い注意されたし。評価を先に言うと星ひとつだけ。初期作品の中でも厳しい見方しかできない。(※ワード制限のため代替。実際は「稜」の字の扁は「にすい」)
主人公は設計事務所に勤める美形で頭もいい秘書にして人妻、という設定だが、その人物像が内面外面とも描ききれていない。そのために物語が進む過程で彼女が遭遇する出来事の反応が浮わついたものに感じられ、読み手も感情移入できない。ストーリー展開もぎくしゃくしており、しっくり来ないことから疲労感も溜まる。プレイ内容はノーマルなものはほとんどなく、強制牲交、SM、レズ、ス力トロ・・・と倒錯もののオンパレード。カバーイラストから穏やかな淑女によるしとやかなロマンスを想像されて購入をお考えの方々は、よくよくあらすじや他サイトのレビューも参照して検討されたし。
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三つ目のベッドの主は




2024年6月8日「愛の別荘」と同じく、男女の絡みの部分だけを三部にわけて終始描き続けるというシリーズもの。ヤマ場だけで良く、助走やクールダウンに当たる前後の記述は不要、という嗜好の読者には嬉しい構成。内容は、「かつてつき合っていた男女が再会」し、「女は結婚していて、昔の男が忘れられず道ならぬ逢瀬」となり、「倒錯した性癖の別の男女が介入」し、「同性愛&見せつけ」プレイという、藍川作品の多読者にとってはお馴染みのモチーフが結び付けられている。但し、二組の男女による同じ部室での同時多発工ロは起こらず、ん? 何のためのトリプルルーム? と、読んでいて引っ掛かったものの、まぁ何かの象徴として舞台にしたのだと読み込みの浅い自分に言い聞かせ、再読、三読することとしている。
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勉強になりました




2024年3月24日本作「愛の別荘」は上・中・下の三部の短編に分けられ電子書籍で配信され、三部あわせて中短編とも言うべきボリュームの作品となっている。さて内容は、上巻開始早々に不倫の絡みがスタート。珍しく助走らしき導入部がない。登場人物はヒロインと、相手であるアラ還(藍川作品に数えきれないくらい頻出する設定)の二人のみ。その両名の関係についての説明はプレイに並行して効率よく(手っ取り早く)記述され、ほぼ全編にわたって男女の営みの描写に終始する。文章表現のひとつひとつは同氏の作品でよく見られるものの寄せ集めという印象で、この点で作品群の中では際立った個性はないが、道ならぬ恋に踏み出す女性心理の活写ぶりにはなるほどと頷かされる。例えば相手の男が多数の女性遍歴を経て、今度は自分との関係を持つに際し、自分が大勢の中のひとり見られているだけかもしれない懸念を抱く女がいかにして自身と折り合いをつけるか、といった点などである(具体的な内容は読んでのお楽しみ)。なので地味ながら異色作と云える。はじめから終わりまで性描写という濃密さも評価する向きも多かろう。一方でプレイ内容はオーソドックスの積み上げである点などを考慮し、星は3つとした。
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酔えなかった




2024年2月26日もともと週刊大衆に連載されていたものを双葉社より文庫として刊行した長編である。仕事とともに妻をも別れて失いそうな悲哀を負った男と、その伯父が繰り広げる女性遍歴の物語。コミカルタッチなのはまだいい。「濡れて、あっはん」という雑誌連載時の表題からわかるように作品を貫く骨子というかテーマが見いだせないこともまぁまだ良い。だけど伯父さんの局部描写がちょくちょく出てくるたび、現実以上に冷めた世界に引き込まれそうになるのは参ってしまう。これは伯父さんの登場シーンは飛ばして、ひとつひとつの性描写の文章を楽しむに如くなし。あ、いちおう最後は主人公が生きる活力を取り戻すというハッピーエンドになっとる。
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現実味のある虚構と、虚構らしい虚構




2024年2月23日最初にお断り。本作品は後年、「美しくもミダらに」(→カタカナ部、本来漢字だがコードに抵触しカナ書き)なる表題で、双葉文庫より再版されている。重複買いに注意されたし。
さて作品は、カイロプラクティック医院に再就職した元銀行員が、雇用主である院長とともに、施術の延長で女性のカラダにイタズラし、行きつくところまで発展、というパターンを状況を変えて繰り返すオムニバス的性格の長編。プレイ内容はあけっぴろげで、ターゲットとなる女性は男二人を前にあっけらかんとハダカになり痴態をさらす。藍川京作品愛読者のやなぎやこから見れば、氏「らしくない」いかにも虚構ですといっているようで、如何せん気持ちが入っていかない。文章のパーツパーツはそそるものの、作品全体を見渡すと「これはフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません」と行間行間で連呼されているかの如くで、リアリティから遠い世界の物語に思え、気分にブレーキがかかる。カバーイラストの女性像は美しいんだけどね。
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やはり、上手い




2024年2月22日登場人物は食品メーカーの社長と、その部下の嫁。嫁と言っても、物語の設定では、社長の部下に当たるヒロインの夫は早世しており、社長がその寡婦を自分のものにするというスジ。花好きなヒロインに自宅の庭を見せるという名目で呼び寄せ、行為に及ぶ。しかし、作中では倒錯や際立って派手なプレイは出てこない。至ってノーマルな責めを、和服、紫式部の花といったガジェットを絡ませて積み重ね、耽美で妖しい短編に仕上げている。非常に美しく、それでいてしっかりと工口い世界に読者をいざなう本作は藍川京氏の真骨頂というべきもので、百戦錬磨を自負するやなぎやこもうならされた。唯一の難点は、カバーイラストで、作中のプレイを忠実になぞる姿態を描いているが、人物の顔立ちがヒロイン悠香子とちょっとちがうような気がする。
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誘惑の季節




2024年2月17日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ、本アンソロジー収録の「誘惑の季節」につきレビューする。なお本作は図書(単行本・文庫)のかたちでは他に出版されておらず、雑誌「特選小説 1997年6月号」に掲載されているのみという点でレア作品。ちなみに雑誌では、山本タカトの挿絵がよくマッチしていて秀逸。
脱線したが、主人公は二十代半ばの若妻。世代の近い官能小説家に似ていたため人違いされたことが発端になり、ロマンスへと発展していく。おりしも主人公は夫が仕事が多忙なことから夫婦間の営みがご無沙汰で、性の渇きに直面していたこともあって相手の男の誘いに乗ることに。藍川作品の中では斬新な筋書きで、男女の絡みに至る過程で大いに気分が盛り上げられる。性描写の部分ははわりと短く、その一方で、一戦交えた後の文章が長く続くが、その短所が短所と思えないほど総合点で高評価。
さて、アンソロジー全体の評価であるが、作者や読者層およびその好みまで多岐に亘るため、ニュートラルとする。
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番外の番外編




2024年2月4日同じ女流作家の藍川京氏が解説をお務めということで、蒼井凛花氏の「愛欲の翼」にレビューを投稿したのが一昨年の10月。今般たまたま同じ著者による本書が地元の図書館にあったので閲読。
本作はキャビンアテンダントの独白を皮切りに、女性たちが次々にリレー形式でみずからの赤裸々な性体験を披露していくという構成。持ち味である若々しくみずみずしい文体は、著者自身の端麗な容姿、および元CAという華やかな経歴と相まって、多くの読者を魅了することだろう。各々のエピソードの内容はネタばれ回避のため詳述しないが、正直言って現実味に乏しい。但しそのことを、航空機や客室常務にかかわる専門知識を駆使してリアリティを持たせることで補っている。
なお惜しむらくはプレイ内容が、それぞれシチュエーションこそ変えているが、どこか画一的で単調に感じられ、また上述の通り虚構然としすぎていて、現実世界の住人が感情移入しにくいところか。
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紐




2024年2月4日藍川京作品愛読者のやなぎやこ、ここでは本アンソロジーに収録されている「紐」についてレビューします。
本作は既婚のミドル男女が織りなすロマンスで、舞台ももはや著者の庭先といっていい京都の町。女性の、相手の男の配偶者に対する細やかな心情も描かれ、また性愛小説の核たる絡みの部分にも十分な長さが確保され、手堅い短編に仕上がっている。ただし、作中には、ソフトながらSMプレイも少なからず描かれているが、小道具として題名ともなっている紐の迫力が弱い。紐を使ったプレイがなんとなく浮いているのである。アブノーマルプレイに関心のないやなぎやこ的には不要とさえ思え、倒錯なしでねっとりと書いても十分いけるシチュエーションではなかったかと思える。それでも女性が魅力的に表現され、ファン以外の読者も読んで損はないと思う。そしてアンソロジー全体の評価であるが、各著者の作風も読者の嗜好も広がるためニュートラルとさせていただいた。
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今夜は感じすぎるの




2024年2月4日藍川京作品愛読者のやなぎやこ、ここでは本アンソロジーに収録されている「今夜は感じすぎるの」についてレビューします。
主人公は過去に短期ながら水商売のバイト経験のある人妻。その当時客として来店していた男との再会を契機にロマンスが展開される。初めての不倫に躊躇いながらも男のリードにより徐々に禁断の領域に足を踏み入れていくストーリー運びの達者ぶりは本作でも健在で、メインの絡みの描写もなかなか工夫が凝らされていて宜しい。道ならぬ関係に揺れ動く女心の記述が丁寧であり、プレイ描写も濃密で、藍川氏の作品で頻出する「ねっとり」と表現される筆致がいかんなく発揮されている。本短編に限れば星4つとしたいところだが、アンソロジー全体の評価となると、各著者の作風も読者の嗜好も広がるためニュートラルとさせていただいた。
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そこに愛はあるんか




2024年1月21日主人公は高校を卒業してすぐ結婚した美貌の人妻。京都を舞台に、かつて自分の教師だった男との道ならぬ恋が展開する。結婚後もなお身持ちの悪い夫に見切りをつけ、自分から教師にコンタクトし、宿泊先のホテルにまでついていき、誘惑する。プレイ描写も教師の立場を気にして積極的になれない男に、女が猛然と仕掛けていくほどのタフネスを見せる。若いながらも欲望をむき出しにする主人公の性豪ぶりがテンポよく描かれ小気味よい。一方で肛門愛撫はないが、ストーリーの流れや、どこか清純さを残す十代の主人公の性格を勘案すれば、むしろその内容で良いことが、本作を読めばおわかり頂けるだろう。特筆すべきは、ほぼ全編を通じて男女のお互いに対する愛情が溢れ、美しく仕上がっていること。作品の良否を決する点は、某消費者金融のCMではないが、「そこに愛はあるんか」。高評価。
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鶴に、戻らないんかい




2024年1月14日タイトルでわかるとおり、本作は知らぬ日本人のいない昔話から題材をとったと思われる短編作品で、登場する女が『鶴乃』という名前であることや、男が女を助けたことをキッカケにして深い仲になる点など、ほぼ『鶴の恩返し』がベースであることは間違いなし。但しこちらは歴史ものではなく、女も鶴に変身して戻る結末とはなっていない。さて、肝心の性描写の方だが、優しく、心細やかな鶴乃の性格が詳細に描かれ、その上に指戯、口戯、本番が濃厚かつ多くのスペースを割いて記されていて、大いに読者の気分を盛り上げる。星数は迷った。3は明らかに超えている。が、四捨五入してやはり3か。でも、こうして昔話を土台にしてめくるめく性愛の世界をあらたに創作するという試みは歓迎したい。
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青春遥かなり




2023年12月9日妻子持ちの主人公の男性教師(49)が、二十一年前に心奪われた教え子との再会から、その時果たせなかった思いを遂げるという、男にとっては切なくもノスタルジーをくすぐる物語。そうなんだよ。男は未練がましい生き物なんだよ。と、読んでいて共感しきり。しかし、である。女流作家の著者がこれほどまでに男目線に立てるというのが驚き。著者に対するとあるインタビュー記事で、男性読者から、「先生、男心を理解できるんですか?」とよく訊かれることがあるというのを読んだ。こうした鋭い人間観察眼も他の追随を許さない所以か。性描写は至ってノーマルだが、清純な学生が二十年以上の時を超えて好色な一面を隠さぬ熟女に変貌しているさまは、まさに脱皮を遂げた白蛇を彷彿とさせる。やなぎやこも本作を読んで触発され、昔の恋愛経験を思い出した。W不倫に至る女の心理の過去からの変化をもう少し掘り下げて欲しかったため星3つとしたが、おおいに想像力をかき立てられる良作であることは間違いない。
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不貞行為の一線の線引きはどこに




2023年11月28日大学を卒業してすぐにコンサルタントと結婚して優雅な専業主婦生活を謳歌しているヒロイン。それが、夫の仕事が多忙になり夜の営みが遠のいた途端、不満をかこつようになる。社会人経験がないとこうなるものか。やがて友人と訪れた名古屋で、ヒロインは溌剌としたミドルの内科医と出逢い、ホテルの部屋をともにする。だが、作中では最後の一線、つまり挿入行為には及ばずに終わる。ヒロインはそのことを理由に、これは不倫ではないと夫、というより自らに言い聞かせる。昔から世間一般、どこをもって一線とするかは色々言われてきた。本作のように牲器の結合に至らなければよし、とか、コンド―ムを装着して直に触れ合わなければセーフ、とか。本作に戻ると、やなぎやこはその設定にリアリティがあっていいかなと。別の異性との運命的な出会いを心の底で求めている既婚男女にとって、うんうんと頷きながら読めるのではないだろうか。
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呑んでみたさのワカメ酒




2023年11月27日またまた出ました未亡人。本作のロマンスのお相手はヒロイン夫婦お抱えの庭師。旦那の没後、庭の様子を見に来た男は、ヒロインに屋敷の中に招じ入れられ、酒食を供され、その流れでヒロインの美体も馳走になる。詳細はネタバレを避けるため書かないでおくが、しっとりゆっくり、ほどよく抑制を効かせたストーリー運びのなかで、ワカメ酒というのが出てくる。これも詳しくは読んでのお楽しみだが、美女の躰の一部を使って呑む酒はまさに、「白玉の 歯にしみとおる ~」の牧水の心境に通じるか。ただ惜しむらくは、これも何度か他作のレビューで書いてきたが、アラ還という男の年齢設定はどうにかならなかったものかね。一応作中では歳のわりにモテるというキャラづくりがなされているが、せめてもう十歳ほど若い壮年の方が現実的だと思うのだが。
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星3.42




2023年11月17日以下7作品より成る短編集。
・梅雨の花
・閨
・寄り道
・赤い海
・女梅雨
・記念日の夜
・残された記憶
これらはいずれもシーモアでひとつひとつバラ売りされており、それぞれすべてに、やなぎやこはレビューを寄せておりますのでご参照を。さて、ひとつの冊子としてこの短編集を俯瞰するとなると、7作品の評価を平均した結果、タイトルにあるとおり標準よりやや上の星数。なべていささか年寄り男が多く登場しすぎる印象。よもや男の読者の劣等感を刺激しないための配慮でもなかろうが、男ももう少し若くて魅力があった方がヒロインもより幸せになり、読者も幸福になるんじゃないかなぁと思う梅雨ならぬ秋の夕暮れ。
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Anal Seχは・・・ない!




2023年11月17日満たされない日常生活に飽いた人妻がかつての交際相手にコンタクトを取り再会し、あとはお決まりの展開。ヒロインが自分から電話を掛けて求めに行くなんて、さぞや意欲旺盛な肉食女かと思いきや、再会を果たしてからは至って中性の熟女の振る舞い。ただ新鮮だったのは待ち合わせ場所の北鎌倉から、一戦交える場所に選んだ横浜中心部へと移動していることで、古都と都会の鮮やかな対比が作品に華を添えている。さて、シーモアの紹介文ではァナル牲交が含まれているかのような書き方であるが、実際には肛交はない。これって景品表示法違反ぢゃないかぁぁ! と声を張り上げたくなるが、まあプレイの内容もなかなか宜しいので目くじら立てないでおこう。それにしても相手のアラ還男があんなに元気なのは少々無理がある。プラスマイナス材料交錯の結果、星3つ。
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一粒で二度美味しい




2023年11月3日本作品も著者の長編・短編を問わずよくある未亡人もの。しかし、シーモアの作品紹介を事前に読んで、特に期待を持った。配偶者の四十九日明けに、まるで故人があの世から直接送ってきたかのようにヒロインのもとに宅配便が届く。手紙とともに入っていたのは、いわゆる大人のォモチャ。孤閨の淋しさに耐えかねていた中、手紙の言葉に導かれるように、ヒロインは玩具を夜の供にするようになる。故人の生前の手配による贈り物はその後も断続し、やがて女は亡夫の事業の後継者との只ならぬ関係に入り込んでいく。こう書くと、やっぱり多くの他作と同じではと思われるかもしれないが、本作はそれを堕落と感じさせない線にとどめ、貞淑なヒロインがしとやかさを失わないよう、上品な工ロさを保持している。そうして読み進むうち、終わり近くに藍川作品のファンにも嬉しい「贈り物」が。処女作『華宴』の主人公の名前が登場する。題名に「宴」の一字をかぶせているのは二作品を結びつける意図か。かかる演出を抜きにしても、全編にわたりしっとりとうるおいのある文体で貫かれた佳作である。
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蛇頭龍尾




2023年10月24日独身熟女の京都での突然の出逢いからのラブロマンス・・・読者にとっても何度も来た道。今回の舞台は洛北の名所、戻橋。冒頭から相手の男が現れ打ち解けるまでの紙幅が短い。何度も京都ロマンスを書いているうちに、とうとう端折るようになったか、と邪推がきざしたものの、いざホテルで一戦するに及んで惹き込まれるようになった。まず、ヒロインが男女の睦みごとに積極的で肉食の性格であること。意外とこの手のキャラクターは藍川女史の作品の中では多くない。この登場人物設定が絡みの幅を広げていて、ページをめくる手が知らず速くなる。プレイの記述に女の貪欲さが反映されていて高く評価したい。にもかかわらず星3つどまりとしたのは、相手の男がアラ還という年齢であること。またジぃさんか・・・。もう、これはやなぎやこの性分というか、好みなので悪しからず。
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もうひと伸びほしい




2023年10月14日主人公はアラ還の男。娘夫婦を従え初詣に北鎌倉へやって来たところ、かつて懇意となった部下の女との偶然の再会を果たす。その時はホテルまで一緒に入っておきながら、土壇場でキスもすることなく終わった両者だが、時を超えて再び巡り逢ったふたりは今度こそ・・・となる。なるが、どこかちぐはぐ感が。寒風に耐え他に先駆けて咲く一輪の梅花の描写は可憐でつつましく、それでいて力強さを感じさせるが、物語と同化していないというか、白梅が白梅で終わってしまい、花と切り離されて描かれているのは今や人妻となった相手の女との営みのみ。女性がなぜ不倫を犯してまで過去の男とベッドインするのかといった心の揺らぎにも触れられず、モヤモヤが残る。星は2.5。四捨五入して3。
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エイナス(英語の発音)




2023年9月8日題名の天竺牡丹とはダリアのこと。その花にゆかりのあるヒロインは若くして未亡人となっている。幼馴染を訪ねて、再会し、そして・・・。いくら情感豊かな作品を数多く著している氏のファンにしても、さすがに何度も似たようなパターンが続くと食傷気味になりそうだが、そうはならなかった。男女の絡みに突入してから本作の個性が明らかになる。肛穴への愛撫が長く続くのである。内部に指や道具や「全長」を挿入しない限りノーマルの範疇と考えるやなぎやこにとってこの作品は新鮮。ただ、この器官への責めの描写に多く紙面を割いたせいか、その後の展開が少々駆け足でせわしない。それでもやなぎやこは夫と死別したヒロインの幸せを願ってやまない。そしてふと思う。ダリアの花の形状はまさにヒロインが集中的に愛されたその部分にそっくりではないか。
なお、本作はコスミック文庫から刊行の短編集「艶文」に収録されており、重複買いに注意されたし。
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ひねりが加えられていて宜しいのでは




2023年7月17日本作は状況設定が他の作品で多く見られるものと若干異なり、嗜好が凝らされていて新鮮です。別の男がパトロンであった美女との偶然の出会いから主人公の男の身の上はとんとん拍子に展開し、めでたく当の美女と結ばれ、ふたりの新生活がはじまったものの・・・これから先、ネタバレ回避で筆を止めますが、決してバッドエンドではないのでご安心を。ただ惜しむらくは、カバー画と、物語から想像されるヒロイン像が一致しない。佐藤ヒロシ氏の作品は嫌いではないが、ここでは作品で描かれる女性像が、華やかな経歴である一方、読もうとしていきなり下着姿のイラスト、しかも目が炯々としていて怖い。イメージとミスマッチしています。でも、まあ内容はまずまずなので星3つでよいかと思います。
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読み応えあり




2023年5月15日短編集だが、やはり表題作「もっと深く」にコメントせずにはいられない。ストーリーは40歳を過ぎて未亡人となった主人公が孤閨の淋しさに耐えかねて元カレのもとに押しかけて、あとはお決まりのパターン。だが再会するまでのヒロインの逡巡ぶり、迷い惑う心理描写がことさら丁寧で、簡素な筋書きでもパーツを丹念に掘り下げて書けばこれだけ読み応えのある作品に仕上がるのだという好例である。そしてカラミの部分。記述の質・長さともに力作というべき出来。ここではあえて詳しく書かない。お薦めなのでご自身で読まれたし。その他にも秀作を収録。正直なところ、氏の短編集はやなぎやこの好みに照らして当たりはずれがあったが、本作品集は佳いと思う。
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(レビュー改訂)ジワジワくる好著




2023年5月3日(2024/2/4 改訂および再評価)
ヒロインは過去に短期バイトながら水商売経験のある人妻。その当時客として来店した男と再会してロマンスが展開されるという筋書き。初めての不倫に躊躇いながらも男のリードにより徐々に足を踏み入れていく展開の焦らしぶりは本作でも健在で、メインの絡みの描写もなかなか工夫が凝らされていてよろしい。道ならぬ関係に揺れ動く女心の記述が丁寧であり、プレイ描写も濃密で、藍川氏の作品で頻出する「ねっとり」と表現される筆致がいかんなく発揮されている。実は、初読の段階ではそれほどの読後感ではなく星3つとしていたが、再読してレベルの高さに気づかされた。ここに謹んで評価を改めさせていただく。作品を評価することの責任の重さを痛感。
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妖精のロマンス




2023年3月21日タイトルにもなっている「森の妖精」とはいったい何者か、は明かしません。本作は雰囲気で読ませる藍川作品のなかでも特にヤマ場である男女の営みに持っていくまでの過程が秀逸です。舞台は十和田湖、八甲田山。京都など古都を多用する氏にしては珍しいと言えますが、北東北の名所の美しい描写が、ヒロインの揺れ動く心情によく投影され、妖精の魔法よろしく甘美な境地を演出しています。性表現も丹念で、一歩一歩丁寧に、読者の気分を高めてくれます。ただ1点、個人的な趣味かもしれませんが、ヒロインの身上設定が子持ちの主婦というのが少々、生活感が出てしまい、盛り上がりを冷ましてしまうかも。そのため星はひとつ差し引いて四つとしました。
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手堅い仕上がり。反面際立った特徴も・・・




2023年3月8日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ、今回は「秘本・陽炎」収録の本作品につきレビューします。ヒロインは二十二歳の女子大生(と称する。事由はネタバレ回避のため読んでのお楽しみということで)で、水商売のアルバイトをしています。店の常連のオジさんたちを相手に可憐に振る舞い、可愛がられるが・・・結末にドンデン返しが。この手のシチュエーションは、登場人物の振る舞いやストーリー設定に比較的自由度が高く持てるせいか、実は藍川作品にわりと多く見られます(京都+着物+熟女 ほどではないですが)。性描写はといえば、やや淡泊。若く、性に奥手(を装っている)な女性ではそうなるのが自然ですが、プレイ内容に個性が乏しくなっている点は否めません。終盤でヒロインの「本業」のパートナーである同世代女性が登場してレズプレイが披露されますが、抑揚のない調子を盛り返すには至らず、熟慮の末、辛めの星二つとしました。なお、本作は、シーモアでは取り扱いがありませんが、氏の短編集「情事のツケ」(祥伝社文庫)にも収録されています。
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少々暗いトーン




2023年1月21日本作は、かの「源氏物語」をモチーフにしており、文庫本で420ページを超える大作。主人公に「光」の字が、主人公の生母に「桐」の字が、継母に「藤」の字が当てられていることからもそのことがうかがえよう。後半部分のもう一人の主人公というべき、事故により両親を失い、養子縁組で主人公の妹となる「紫織」と主人公の近親相カンに至るまで「源氏~」の筋書きに忠実たらんとしていることがうかがえる反面、力が入りすぎたか、文芸作品とも性愛小説ともつかない宙ぶらりんの仕上がりとなってしまっているのが惜しまれる。かつ性描写が、物語の比較的早い段階からアブノーマルプレイに傾斜しており、読み手によっては拒否反応を示す向きもあるかも。また原作に沿っているため、登場人物の死も相俟って全編を暗い雰囲気が覆っている。一方、文章表現の流麗さはさすがで、そう言った部分も楽しめるため星三つでも良いかと思ったが、熟慮の末ふたつとした。
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年寄りと絡まなくてよかった




2022年12月4日広い屋敷と体の渇きを持て余した女、それと屋敷の執事兼用人の高齢の男。他の作品にも同様のシチュエーションがあったが、本作の読後感は妙な言い方だが、ホッとした、というものである。「女主人」では、老いた男の下半身の描写がでてきて「勘弁してくれ」というかそけき悲鳴を内心上げたものだが、こちらはその展開に至らず、それどころか男女の営みも、ない。ヒロインは25歳の社長夫人。夫以外の異性経験がないまま結婚し、そのためか、ウブさを残しつつ夫婦生活を送っていた。その夫が長期出張で家を空け、夜間は家政婦も帰宅しヒロインと執事の男のみ。淋しさのせいかヒロインは就寝できず、執事を自分の寝室に呼び部屋を同じくして眠ろうとするところから事態は発展し・・・。半分ネタばらしになってしまうかも知れないが、執事はヒロインにこれまで経験のない、オナ二ーの仕方を教え込んでいく。ヒロインの夫の予期せぬタイミングでの帰宅を気にする執事の心理描写は少々くどいか。反面、ヒロインのネグリジェからヘアが透けるという記述はグッとそそられた。
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斬新な設定。そそる




2022年12月4日高齢の書道家の弟子にして不倫相手だったアラフォーヒロインが、師匠の没後、欲求不満でいるところに書家の孫に出会い、物語が展開する。その後の運びは性愛小説お決まりのパターンだが、随所にこれまでの熟女vs年下男との構図にない試みが施され、大いに満足のいく一編である。ありがちな、年上女性が遊び半分に相手を誘惑するというものではなく、肉欲と大きな年齢差という現実との狭間で葛藤する主人公の揺れ動く胸の内が詳らかにされ、このストーリー展開が徐々に読者の気持ちをかき立てていく。そして、幸せなクライマックスへと一気に繋がっていく筆致は、著者の高い文章力、構成力を感じさせてくれる。高評価。お薦めである。
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良い意味で裏切られ




2022年12月4日三十代後半独身美女のラブロマンスだが、出だしはアラカン男との不倫描写で凡作かと少々落胆した。しかしその後、舞台を表題にもある京都に移し、年下との男との絡みに移行。「京都」「偶然の出会いからの逢瀬」は藍川作品に数多く登場するシチュエーションで、他の多くと異なる点は、ヒロインの装いが和服でないことぐらいか。だが、異性との邂逅から営みに至る描写が丁寧で、プレイの内容も愛情あふれるもの。読み進むにつれ最初のがっかりは完全に失せ、引き込まれた。ただ、あえて注文をつけるとすれば、ヒロインの立ち位置が、年上の男を待ついじらしい女と、京都で出会った年下男をリードする女豹と複雑であり、その二面性をもっと深く描き分けられるとなお良かった。ともあれ、無理なく丁寧な物語展開は星四つの良作という評価がふさわしかろう。
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少々過激すぎでは




2022年11月3日本作は藍川氏初期の長編「秘密俱楽部 人妻教育」を、2009年に加筆・改題の上出版されたもの。従ってすでに「秘密倶楽部~」をお持ちの方は注意されたし。内容は、主人公である人妻が、配偶者の弟と道ならぬ関係に陥るというもの。近親であるはずの二人はどんどん深みにはまり、やがて人妻は暴力と倒錯の地獄へと足を踏み入れていく・・・。一冊子を構成させるためにはノーマルなプレイだけを淡々と綴るだけとはいかないのはわかるが、ちょっと過激路線にきりすぎではという感想。少なくとも倒錯ぎらいのやなぎやこ的にはアレルギー反応ものである。「ゆいな」という愛らしい響きの名を持つ主人公が不憫で不憫で。。。
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番外投稿その2




2022年10月30日藍川京作品の愛読者であるやなぎやこ、本作はその藍川女史が解説を務めている関係で、番外編的にレビューします。
藍川作品に目が慣れたやなぎやこ、本作の第一印象は文体がフレッシュで若々しい、というもの(お断り:何も藍川氏や他の書き手の作品がくたびれているということではありません)。
主人公は美人のスチュワーデス、もといキャビンアテンダントで、後輩CAからの思いもよらない相談を、場当たり的ながら処理するところから物語が始まります。何しろ著者は元CAというだけあって、ディテールが鮮明に描かれていて、リアルと虚構が巧みに織り交ぜられた上質のエンターテインメント作品に仕上がっています。藍川氏といい、本著者の蒼井凛花氏といい、暴力的にならず、表現も飛躍し過ぎない点が女流作家の共通の特長かなと思いました。
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投稿番外編




2022年10月27日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。レビューは氏の作品に限っているが、本作はその藍川女史が解説をくわえていることから、番外編ということで、巨匠の作品を振り返ります。主人公は三十路の人妻。夫との満たされぬ夫婦生活から他の男とのロマンスを繰り広げ・・・という、とっかかりはありふれたシチュエーションながら、行為の描写は読んでいて、いい意味で呆れるほどじっくりと、深みを持って展開され、さすがとうならせられる。女の性を研究し作品の中で掴み出して読者の前にどんと置く。その求道者ぶりは、あたかも作中で血道を上げて人妻をいたぶる男達と姿が重ね合わされる。やなぎやこ、読んでいて欲情するどころかその創作力と文章のレベルの高さに感心し、鬼才と凡夫との埋めがたい懸絶を感じるのであった。団鬼六作品ではやはり「花と蛇」が筆頭に上がるが、あれだけの長編、心身を削って読んでいくのが少々辛いという方には、本作を入門編としてお薦めする。
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わかっていても




2022年10月16日氏の作品の定石ともいうべき独身熟女による偶然の邂逅によるロマンス。似たようなシチュエーションの作品をいくつも読破してきたやなぎやこから見てまたか、と思う話だが、もはや中毒というべきか、わかっていても目を走らせてしまう。そして、わかっていても展開される筋書きに大いに興趣をそそられるのである。それはリアリティあるフィクションの世界で、読者である自分もこうした出会いがあれば、という夢を抱かせてくれる。本作もその世界を堅確に守り、読後感まで含めて読み手を満足させる出来となっている。星は3つとしたが、実質⒊5と心得られたし。読んで損なし。
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いささか過激すぎでは




2022年10月8日本作は後年「黒い館」というタイトルに改題のうえ出版された作品。従ってご興味を持たれた読者も重複買いによくよく注意されたし。内容は主人公の人妻が、配偶者の弟と道ならぬ関係におちいるという筋立て。近親であるはずの二人はどんどん深みにはまり、やがて人妻は暴力と倒錯の地獄へと足を踏み入れていく・・・。一冊の長編にものすにはノーマルなプレイだけを淡々と書き続けるわけにはいかない事情はわかるが、ちょっと過激に振れすぎではと感じる。少なくとも倒錯ぎらいのやなぎやこはアレルギー反応が出た。「ゆいな」という愛らしい名の主人公が可哀想で可哀想で。。。
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やはり過激すぎでは




2022年10月8日本作は後年「黒い館」というタイトルに改題のうえ出版された作品。従ってご興味を持たれた読者も重複買いによくよく注意されたし。内容は主人公の人妻が、配偶者の弟と道ならぬ関係に陥るという筋立て。近親の二人はどんどん深みにはまり、やがて人妻は暴力と倒錯の地獄へと足を踏み入れていく。一冊の長編にまとめるにはノーマルなプレイだけを淡々と書き続けるわけにはいかないことはわかるが、ちょっと過激に振れすぎなのでは、と思う。少なくとも倒錯ぎらいのやなぎやこはアレルギー反応が出た。「ゆいな」という可愛らしい名を持つ主人公が可哀想で可哀想で。。。
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不倫の匂いと認めたものは




2022年10月5日藍川京作品愛読者のやなぎやこ。今回はアンソロジー「秘典」に収められた氏の短編「不倫の匂い」につきレビューします。ヒロインの夫は仕事が忙しいものの、家庭内に波風も立たず、幸せな日々を送っている。それがある日、妻のものした日記を偶然見てしまうことから物語は急展開。ネタバレしないよう詳細は語りませんが、最後は誰も傷つかず、バッドエンドにならずホッとします。全編をほのぼのした調子で推移するぶん、性愛小説としての見せ場はやや力不足の印象。ヒロインが書いた日記を絡み相手の男が盗み読む、という筋立ては氏の作品によく見られるパターンだが、本作はハード度、濃厚さがもう一歩。星は悩んだ末2つとした。但し作品集「秘典」の中には大御所南里征典氏の作品もあり、ご興味ある方は手にとられるとよい。
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佳い作品です。けれど




2022年9月23日既婚のミドル男女が織りなすロマンス。舞台はもはや著者の庭先と言っていい京都の町。女性の、相手の男の配偶者に対する細やかな心情も描かれ、また性愛小説の核たる絡みの部分も十分な長さが確保され、手堅い短編に仕上っていて、良作と言える。ただ、作中にはソフトながらSMプレイも少なからず描かれているが、小道具として題名ともなっている紐の迫力が弱い。紐を使ったプレイが何となく浮いているのである。アブノーマルプレイに関心のないやなぎやこ的には不要とさえ思え、倒錯なしでねっとりと書いても十分いけるシチュエーションではなかったかと思える。それでも女性が魅力的に表現されていることなどを考えあわせ、星三つで着地。読んで損はないと思う。
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おトク感はあり〼




2022年9月22日不倫もので中年男とややそれより若い熟女のアバンチュール。読んで おや? と思ったのは、絡みの部分に至る助走というか導入部が他作品に比べ非常に短い。あっという間に男女の営みに突入です。では、尺をどうやって確保しているか。それはアブノーマルプレイに入り込んでいるから。とはいっても、まあ倒錯ぎらいのやなぎやこから見ても許容範囲。なのでヤマ場を長く楽しめ、おトク感はあると思います。ただ難を言えば、やなぎやこが「雪見酒」のレビューで指摘した点がここでも見られる。すなわち「主語」が一定しない。作中の文章が男目線になったり女の視点になったりと一貫性を欠く。ゆえに評価は星三つどまり。それでも題名にもなった、芳い体臭を放つ女性、一度巡り遭いたいものである。
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火の花




2022年9月9日藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。Vol.1のトップを飾る氏の「火の花」につきレビューする。本作は冒頭より火の花(=彼岸花)の赤が鮮やかに描かれ、読者の視界が紅一色に染まる。と思っていると、ヒロインの父、そして弟子でヒロインと結ばれる男が生業として取り扱う竹が描かれ、一転して清冽な碧緑が作品世界を彩る。話の展開も美しく、ヒロインのやさしい性格が丹念に表現されていることも相まって良品と言えるだろう。そこへもってきて、他の作品でも見られない上述の見事な色どりの対比。一本取られた! と思わず心中うなってしまうほどの計算し尽くされた文章術に、脱帽する逸品。
さて一方、アンソロジー全体の評価であるが、各著者の作風も読者の嗜好も広がるためニュートラルとさせていただいた。
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花の赤、竹の碧




2022年9月9日日頃藍川作品を愛読しているやなぎやこ。本作もこれまでの流れで自然にページを繙いた。が、読み始めてすぐに本作が非常に計算されて紡がれていることに気づいた。まず題名の火の花、これは彼岸花を指しているが、冒頭より花の赤が鮮やかに描かれ、読者の心の視界が紅一色に染まる。と思っていると、ヒロインの父、そして弟子でヒロインと結ばれる男が生業として取り扱う竹が描かれ、一転して清冽な碧緑が作品世界を彩る。ストーリー展開のヒロインの所作に優しい性格が反映され、温かみがあって好ましい。それに加え上述の見事な色どりの対比。一本とられた! 反面、色彩表現の仕掛けに気づかず最後までいってしまう読者もおられるだろう。その意味では、読者を試す、ある意味怖い短編である。
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遺された記憶




2022年9月9日藍川京女史の愛読者のやなぎやこ。本書のトップを飾る氏の「遺された記憶」につきレビューします。亡母の形見の日記にあった想い人を訪ね、北陸に足を向けるヒロイン。そこでの思わぬ出会いから物語は一気に進む。供養のつもりか、母の元カレの足跡を追うヒロインの健気さ、ひたむきさに惹きつけられ、読者はページを捲りながら思わず感情移入して彼女の幸せを願う。ラストもヒロインの将来の幸せにつながることを予想させる終わり方で、すっきりとした読後感。星4つとする。
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梅雨の花




2022年9月9日藍川京女史の愛読者のやなぎやこ。Vol.22のトップを飾る氏の「梅雨の花」につきレビューします。夫が借金している奥さんを、その友人である妻が連れ出して、主人公の初老男が玩ぶ、というストーリー。資金援助のカタに関係を求めた女性をゆっくりゆっくり男が自分のものにしていく過程を楽しむ嗜好が凝らされている。読者諸兄には短気を起こさずじっくりと読み進んで頂きたい。本アンソロジー全体の評価は、作者や読者層およびその好みが多岐に亘るためニュートラルとする。
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超常現象は性愛小説と相容れず




2022年9月6日藍川京女史の愛読者のやなぎやこ。本書のトップを飾る氏の「妖花」につきレビューします。しかし、いいですねぇ。氏の持ち味である雅で流麗な文体は本作でもふんだんに発揮されています。主人公のややくたびれた感のある中年男が、偶然写真にうつり込んだ美女をもとめてSNSで出会いを呼びかけ求め続け、そしてついに・・・。サビである男女の絡みに行き着くまで美しい日本語で読者を焦らしに焦らせます。読者は長い助走区間を倦まず歩き続ける。登山に例えてもいい。クライマックスまで遠いのに、なぜ登る? そこに山があるから。だが、「頂上」に辿り着いたと思ったら相手の女性は・・・! ネタバレ回避しますが、個人的には女性の属性設定が官能小説にはそぐわないのではと思いました。美しい作品。でも星は悩みに悩んで3つ。それでも読むべき。
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