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今月(10月1日~10月31日)

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シーモア島
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投稿レビュー
  • 国宝

    吉田修一

    極道でも、役者でも。
    ネタバレ
    2025年9月17日
    このレビューはネタバレを含みます▼ やさしい語り口でテンポよく運ぶ文章がとても読みやすいです。ただし第一章は昭和時代ある地方の“組”同士の抗争の歴史から始まるのですが…

    極道の家に生まれた喜久雄少年は殺された父親の敵討ちに失敗(そして本当のカタキは別にいると喜久雄は知りません)したのち、歌舞伎役者の丹波屋・花井半次郎に預けられることになります。魅入られたように稽古に励み、数年後には半次郎の息子俊介をさしおいて、半次郎の代役をつとめるまでになります。(映画版を見た後だと舞台姿や劇場の昭和感などが目に浮かぶのでよいですね😄)
    その後俊介の失踪、半次郎の死と続き喜久雄不遇の時代になります。生まれや後ろ盾が大事な世界ですが喜久雄は自分の出自に負い目は持ってないんですね。喜久雄には世話になった恩は忘れないという信条があって、それは極道時代と変わらないというのが理由の一つのようです。そして世話になった人の借金は自分の借金だ、とスルッと1億以上背負い込んだりします。また祇園の芸者さんとの間にお子がいるものの「歌舞伎役者に隠し子がいたぐらいで誰が驚くねん」というのが一般的な価値観、という時代なのですが、年代とともに世相・風潮が変わっていくさまも当時の出来事、流行りとともにつづられていきます。
    その後も紆余曲折、山あり谷あり、幸せも苦しみも濃縮されたような人生なのですが、散りばめられたエピソードがなんだかとてもよくて、たとえばイビられ続けの喜久雄が映画に参加したら、ロケ先でさらに散々な目に遭う話とか、徳治(何者かは省略)の綾乃ちゃん(喜久雄の娘)救出作戦の顛末とか、中年期の喜久雄が15歳のころの俊介との会話を思い出しているところなど…
    下巻ではもう親戚ぐらいには喜久雄とその周囲の人たちに親近感がわいているし、彼らが幸せだとうれしくなるのですが、終盤ご本人は他の人が踏み込めない場所へ、行ってしまわれましたね…じわっと哀しみがにじむ結末ですが、立花喜久雄という1950年長崎生まれの、とある歌舞伎役者の役者人生をここまでいっしょに過ごせて幸せでした。
    長々とすみません、お読みいただいた方ありがとうございました。
  • 1945シリーズ番外編

    尾上与一/

    😆うれしい☺️たのしい⭐番外編祭り⭐
    ネタバレ
    2025年7月27日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 「1945シリーズ」の番外編をまとめた短編集。過去に同人誌、書店特典などで出されたものがたっぷり(ホントたっぷり!)読めるという、私のように遅れてやってきた者には垂涎モノのありがたいおまとめ版。
    ①【郵便飛行機より愛を込めて】は「天球儀の海」と「碧のかたみ」の番外編
    ②【謹製ヘルブック】は「彩雲の城」の番外編
    ということになるかと思います

    読みごこちはほっこり、じわじわくる、なぜか懐かしい、お母さん大変(恒…)、衝撃、ほろにがい、六郎がんばった、仲良しですね(いたわりあい)、仲良しですねその2(性愛大盛り/ヘルブック=エロ本のタイトルどうり)、「お前本当は潔癖症どころか几帳面ですらないだろう」にクスクス笑い、もう「霊験あらたか」ときいたら吹き出してしまう、昔の母すごい(伊魚養母の歓待ぶり)、昔の母あきらめない(藤十郎にヨメをとらせたい)、伊魚いじらしいのに小悪魔/美人の本領発揮(だって本編ではおかしな俳句作ってワニつかまえて漂流船でふんどし振り回してたのに😁)、炊きたて白米とみそ汁とめざしと漬け物の朝ごはん食べたい、藤十郎ハイスペックモテモテ大丈夫か(大丈夫です)、などなどなど… とっちらかったレビューで申し訳ありません。まだ番外編の続きがあるようでそちらも楽しみにしたいと思います
  • 舞姫は暁に黄金の恋を紡ぐ

    尾上与一/もちゃろ

    「まるで物語のようだ」
    ネタバレ
    2025年6月22日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 設定がとっても凝ってます
    金を産み出す体質の一族が住む隠れ里、血を求められた過去、巫女のような役目の美形の舞姫(実は男子)、食べ物や動物にまで異世界感あふれて…
    ちょっと悲劇が似合いそうな設定ですが、しがらみを嫌う自由人ラジャン王子がまるで舞姫レネの運命を書き換えるかのように波乱を呼び込みます。ラジャン王子はうかつな面もあるけど、こうと決めたら一途。レネの恐れや勇気、頑固さをちゃんと理解してくれます。レネは舞姫の役目を終えたら神官になろうと考えていた人。欲がないことをお兄さんに心配されています。
    設定やハプニングについていくのが楽しいものの、2人のかわいい絡みもっとくださいと思っても後半更にハラハラの連続。襲撃された隠れ里は滅亡するのか、カタブツのレネは変わるのか、結婚できない状況を乗り越えられるのか…
    まさに怒涛の展開の結果、あきれるくらいに幸せ(物語のようなお話、なものですから)な、そして熱々の2人がいました。めでたしめでたし、でした。
    いいね
    0件
  • 1945シリーズ

    尾上与一/

    1945シリーズのとりこになりました
    ネタバレ
    2025年6月15日
    このレビューはネタバレを含みます▼ とってもよかったのでレビューに挑戦!

    天球儀の海/地方の旧家、離れに暮らす養子にきた若い男、冷酷な振舞いの跡取り息子。そして特攻の出撃までの残り時間は… なんかゾワゾワする流れと思ったらなんとも残忍な事件が起きます。とんでもない凶行なんですが、そこには隠された意図があって…というお話。ある人が犯人の真意に気づくところは心に染みる場面でした 年月を経てもうひと展開あり、ほろ苦さはあるものの意外にもあたたかな結末です。作品の前半で幼い子が海辺で遊んでいて危険な目にあうエピソードがあります この時の最悪の「もしも」がそのまま事件の隠喩になっていて、全部読み終えた後思い出して「ああぁっっ!!」となりました。

    碧のかたみ/ワルガキがパイロットになったような恒と、恒に振り回されつつ惹かれていく相棒の六郎。ケンカと懲罰の絶えない日常や南の島の基地での暮らし、空での戦いぶりなど読み応えたっぷりです BLの面でもはんぶんこして食べるパイン缶、雲の上の星空、手作りの線香花火、鼻歌の「星めぐりのうた」等キュンとなるシーンの宝庫なんですがさらに!
    「俺はもう俺の一番を決めたからいい」
    「…撃ち墜とされた気がする」
    「恋心だ、馬鹿」
    等々、おノロケやおバカも含めてこれでもかと甘いセリフの数々が投入されています。試練も訪れるし、《その後》の日々には葛藤や苦しみもあるかもですがひとまず、青春のキラキラと恋の甘さ、2人のまっすぐな気持ちが印象に残る作品でした。

    蒼穹のローレライ/塁がやっと望んだ夢は好きな人と穏やかに暮らすことーそんなささやかな夢すら持てなかったんですよね 塁の戦いと叶わなかった夢を思ってせつなくて泣きました。
    U字部品はノンフィクションと想像しましたがあとがきにも特に言及はなかったです けれど作者様が多くの資料にあたり、体験者の話を聞く作業をされたと解りよかったです。当時のラバウル基地や日本の空気を吸っているかのような、充実したシリーズだと思います