脊柱起立筋さんがつけた評価
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作家様買いです。黄泉比良坂的事務所に導かれ、自分という存在に辿り着く…まさに奇縁譚。
物語に惹き込まれるのはもちろん、何と言っても攻めが実直!実直な攻めでございますよ!優しい(不器用)から優しい(嫉妬深い)に成長した姿があまりにも希望で完結してることに絶望しました。
鈴島鑑定調査事務所からバイトのスカウトを受けた主人公・平子千佐は、人に「誰かに似てる」と思わせてしまう特技を持つ大学生。社長の鈴島と、鑑定員の魚住とで複雑怪奇な依頼を解決していく中、二つの大きな事件に巻き込まれていきます。
一件目、取り替えられた壺から出てきたのは、悍ましく切ない秘密、自己同一性の欠片、運命の約束。壺の調査依頼をした天花寺家のぼん、オトヒコとの再会。
二件目、オトヒコの告白に心が揺らぐ千佐。難儀な宿命が繋ぐ縁。愛に満ちた白昼夢。予見か嫉妬か、愛は時空を超える。自己の統合と受容。
幽玄で詩的なあの一瞬、何度読み返しても素晴らしい。これからは冬がきて雪が降るたびに、あの日に追いついただろうかと思いを馳せるんだな…。
社長と魚住の馴れ初めも、艶かしくて悲しくて惹き込まれました。空白の期間にお互いをどう思って生きてきたかを考えるだけで胸がいっぱいになります。
本人の意思ではなさそうな女装の理由と(厄除けとかだと思いますが)、最大でも4歳差とはいえ、オトヒコが高3の誕生日を迎えてるのかが明言されていれば、より没入できたかなと思いました。しかしオトヒコの年齢は人間年齢でいいんだろうか…現実世界もわからないことだらけだし、異世界のことはわからないままでもいいか。
胡蝶がみても荘子がみてもどちらも夢には違いない、夢であることを知っていることが大切なんだと感じる作品でした。(閉じる)
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