romance2さんがつけた評価
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お金持ち、いいなぁ、羨ましいなぁ、とは思っても、危険と隣合わせにいるとは庶民のこちらは中々想像しない。しかしお金ある故に金持ちは狙われるのだから、あらゆる思惑が交錯するのが世の常なのだろう。財産目当てに近づく結婚目的が大概で、他二番手位にはボディガード物辺りが目立つのがHQ仕様。ところが本作は誘拐が題材に(「ガラスの仮面」の速水真澄が巻込まれたっけ)。家族の情につけこむ最もタチ悪い犯罪の一つで、古い時代は頻発し治安の悪い国では大人が巻き込まれていた。
私が子どもの頃は、日本で(或いは在外日本人も)営利目的誘拐の危険はまだ残り、社会に警戒心があった。海外では長期化した事件もあり、生還しない事件も結構あった。遠くない話だ。謡曲隅田川から拉致被害まで古今東西誘拐の悲劇は生まれてた。
本作は犯人達が更に卑劣だった。許しがたい凶悪犯罪。程度問題でゆすり・たかりの類も同根で、標的となる根拠は、金持ちだから、有名人で知られてるから、目立つから。
ハピエンを楽しみに読むHQで、もうこんな居たたまれない話を読むことになるとは!一気に重苦しい気持ちに襲われ、ヒロインの両親が気の毒過ぎて、娘を箱入りにする面倒臭い強権父親像なんて消し飛んだ。お父様の辛さ、苦しさ、どのような悲嘆の絵を見せようとも、そんなものではないとなるだろう。
しかし、ヒロイン父は、貴重な宝石コレクションよりも娘が大切だと言った。暗に換喩されるいかなる身代金(宝)も娘の幸福の為には手放せる親心、娘に然るべき相手との出会いがあったと知ると、ただ閉じ込めておくやり方を変える日が来た自覚が父にはあった。
首実検を通過したら、後はそこそこ機会も与えてみる。
遊びだと、これほど堂々と男の側で意思を貫かないだろう。
絵は正直それほど響いてこなかった。悪くは無いのだが。彼視点で描いているからロマンス成立になるが、父親サイドに立ったストーリーも出来そうだ。余りに過酷な事件が父娘の日々を根本から変えてそれでも時間を経れば彼女は成長し、いつしかその愛娘が自身で羽ばたくときが来ていて。
彼は そんな父親の凄まじくガードの固い、ガッチガチの鉄壁を破って突き進んできた。もうもう、この積極性や大胆さ、ヒロイン父の牽制に怯まぬ男らしさ、何よりもそんな「面倒臭い」女性に引かれてしまって押せ押せとなったのだ。グイ感を楽しんだ。表紙、原題邦題共良い。(閉じる)
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