romance2さんがつけた評価
明るい話とも言い切れないが優しい暖かな光を感じる異色作。序盤から長崎先生の見せ方の巧さに引き込まれて...(続きを見る)
明るい話とも言い切れないが優しい暖かな光を感じる異色作。序盤から長崎先生の見せ方の巧さに引き込まれて、試し読みだけで既に手応え充分。
ヒロインが愛情たっぷりに育った事が滲み出る描写が、胸をなんだか締め付ける。そして、ワケ有り人物ゲイブと、彼の事を小さい頃からずっと好きだったシルビー登場。なんていい娘なのか。一途に思ってきたらしいシルビーなくしてこのストーリーは語れない。そういうとんでもない助っ人は、誰よりもゲイブを理解して秘密も共有してきたけれど、ゲイブは故あって別の女の子と契約結婚。影の主役シルビーはみたびよたびごたびもヒロインに手を差しのべる究極の善人。ガブリエルだのエンジェルだの聖なる名前が登場するこのストーリーで、リアリストでデキるタイプなのに天使様的存在。すさんでいた彼ゲイブにはこんないい娘が、一方ヒロインにはそれこそ「蝿」がいた。
ストーリーの構成力といおうか、少し含みを持たせている各場面の、小出しの重層的伏線を敷いている構造が、読んでいて飽きさせない。話の見せ方に面白さを感じるため、絵は強く主張するような見とれるコマがないのに、それが気にならない。
彼の罪を、読み手もじわじわ輪郭取りしていきながら、彼の苦しみの後ろにある暗闇の幼少期〜少年期と、彼の苦しみの最大要因となった事の後に続く嫌悪の人生観への理解を深めていく。
ゲイブはHQでよく見られるようなクライマックスを形作れない。振り返れば、読み手が知らされた彼の罪からもそれはそうだと思う。作者はそこでまた工夫して二人を決着させなければならないから、シルビーの株が上がる訳だ。
私はその後を見せる付け足し頁など短編の制約と結末の締まりとから、歓迎していない人間だが、ここではシルビーの幸せだけは、兆しだけでいいから見届けたい気分だった。
ヒロインのパパとか、牧場のみんなとか、読んでいてハートウォーミング場面で、周囲がしっかりヒロインをくるんでいることが感じられる。作品の暗部に対するバランスを取って豊かな味を出した。
原作は読まないから知らない。
あとがき見て、改作ブラボー!と思った。
私は5.2位の星を付けた気持ち。他のHQを読みに行っても、何度も読み返しに戻っている。(閉じる)
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