星数6個超の感覚。まず絵が凄い。江戸時代を感じさせる絵が。隅々まで圧倒された。ストーリーもよい。後半突然なぜにそっちに?という流れがあり戸惑う。しかしそれも、国芳が大浮世絵画家となることへ繋がる。
大江戸と銘打っているのがなるほど、という
感じで、江戸の貧乏長屋や、町人の中では富裕層に属する商人の優雅な人的交流など、丁寧に細部までいきいき描写。木造芝居小屋の見物席と楽屋裏は、床のきしみや壁の木目まで感じさせるような筆致だ。世の不合理もまた絡めていて、必殺xx人の前半を思わせる部分もある。市井の暮らしが見事に漫画になっていることに驚嘆するだけでなく、作家の視点が地に足がついているような、言葉遣いも考え方も町民達のバックグラウンドみたいなものが伝わる。読み終える頃、一見脇道に入ったと思えた話が本流を太くしていくような構造だったのだと知るのだ。
どんなものが描けるのか?との問いに対して答える国芳の台詞が光る。「この世のもんも/あの世のもんも/見たことのねえ/もんだってな」
名プロデューサーとの偶然の出逢い、前半の盛り上がりだけでも本作を読んだ価値を実感した。歌舞伎役者のサイドストーリー的エピソードもまた国芳の画業に生きるという巧みな展開。「夢」の話も意味深。
この当代トップスター的存在であったという狂歌作者の記念碑がある神社、足を運んだことはあるのだが、また行こうと思った。
後半はまた別の巡り合わせが描かれて、これまた化政期の有名人が登場し、話を盛り上げる傍らに国芳がいる。この人物は実はそうではなかったとはいうが、世に流布されるイメージをうまくサイドに置いていての入れ子構造、これもまた国芳の生涯に多大な影響を与えた形で巧みに彼の画業に沿わせている。この人物の墓も、ペットの墓地があることもあり、またあらためて行こうと思った。
北斎の展覧会は何度も見に行ったし、ほか若冲展や等伯展などはあるのに、単独に国芳作品として意識的に鑑賞したことが今までなかった。この作品で、国芳という人物に限りなく関心を持ってしまった。
掲載誌は「週刊漫画ゴラク」2016/2,3,10,11月とあるので、日頃全く縁のないもの。その雑誌ってスケベおやじ達の本とばかり思っていた。本作品はHシーン無し。別名義でBL作家らしいがBL要素無し。
シーモア(島)で知って、概要とレビューで購入。感謝。大正解。10/31に2世豊国(国貞)墓のある寺を見た。
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