望まれない命ほど悲しいものは無い、存在を認めて貰えないのだから… 生まれながらに捨てられた人生。唯一の親からの贈り物と言えば「すみれ」という名前くらいだろう。愛情を知らず、友達も無く、理不尽な目に遭い、孤独の中で過ごした少年期に身に付けたの
は「感じない」という心のバリア。淀みの中で漂う様に生きて来て、あてもなく流れ着いた二丁目でバーテンとして働くすみれの元に遠縁で8歳年下の佑真が訪ねて来て… 人の痛みには敏感で寄り添う優しさがあるのに、自分の痛みには蓋をするすみれが痛々しい。「ダメな男ばかり捕まえるのは自分を低く見積もっているから」とのママの言葉がストンと腑に落ちる。雑に扱われると安心すると言うのは、大事にされると大事にされなかった過去の記憶と対峙する事になって心が拒絶反応を起こしていたんじゃないのかな。だからラクな方に逃げていたのでは… そんな自分を深い所まで理解しようとする佑真の誠実さと真っ直ぐな想いに惹かれるも、2人の境遇の違いを目の当たりにして疎外感に苛まれ、傷付いたインナーチャイルドが何処までもすみれを苦しめる。でも 佑真と過ごした「幸せな時間」は確実にすみれの心に染み渡っていて、時に痛みを伴うけれど 感情を呼び起こさせていく様は胸に迫るものがある。それは心の成長痛みたいなものかも知れない。淀みから抜け出せずにいたすみれの背中を押してくれたママ、手を差し伸べてくれた佑真の存在は大きいけれど、臆病で諦め癖が染み付いていたすみれが最後 自分の意志で抜け出せたのは、きっと佑真への強い想いでしょう。初めて自分の感情をぶつけられたんじゃないのかな…「寂しい」って本音を言えたのは、心のバリアを解いて寂しさを感じられる様になったから。寂しさを受け入れられる様になったからではと思うのです。どうか自分の手で掴みとった「幸せな結末」を存分に謳歌して欲しい。自分への想いでこんなに綺麗な涙を流す人がいる幸せを噛み締めて欲しい。心理描写で魅せる静かな恋のお話でした 個人的な感想としてはすみれも佑真も毒気が無くていい子過ぎてキャラが立っていなくて、それがストーリーの物足りなさに響いている気がしました。すみれのやさぐれ感を出しても良かったと思いますし、自暴自棄になる場面や本当は父親に愛されたかったと感情を爆発させるシーン等もあって良かったと思いました。2人ともママの存在感に喰われたちゃた感が…
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