孤独な大学生が偶然大男の天才ハッカーを助けたことから始まる不思議な同居生活と、その中で生まれる不思議な情を描いたお話。
独特な世界観と独特なキャラ、天才的な人間が暗躍する裏の世界とぼっちがイジメられる平凡な世界が交錯するストーリー。全てに
おいて今までに見たことないBLでした。
特にキャラの異色さは際立っています。漏らすし吐くし友達もいないという、全く良いところのないダメダメな仁。そんなダメ仁を笑い飛ばし、何故か気に入ってしまうまーくん。最初こそ脅されたような関係性だったものの、世話を焼かれるうちにまーくんに慣れていき、気付けば情を持ち始める仁は、ストックホルム症候群だと分かっていながらも側で自分に優しくしてくれるまーくんが貴重な存在だったのでしょう。まーくんも本来の几帳面な性格からか、ダメダメな仁に庇護欲を感じ、そんな日々が彼にささやかな日常という幸せを与えることで、居心地の良い関係を作っていたように思います。
まーくんは天才ハッカーとして難題をクリアすることへの快感は感じていたようですが、その力で世界を手中に収めようなどの野望は元々抱いておらず、そういうことにはきっとあまり興味がなかったのかなと感じました。刺激が強い毎日は楽しさ以上に虚しさを残し、そんな思いに気付かないタツミとはだからこそすれ違ってしまったのでしょう。最終的には地に足のついた平凡でささやかな幸せを望んだ彼の気持ちは、天才故の悩みかもしれないと思いました。
それにしても、下巻での仁の暴走っぷりは最高に面白かったです。放火までしてまーくんを繋ぎ止めるのにはあっぱれの一言しかありません。会えなくなるなら、捕まって刑務所で面会出来る方がいいとまで言うその発想はもうプロポーズにすら聞こえました。ハッカーとしてではない自分を求めてくれた仁の気持ちはまーくんにとっては何よりも刺激的だったのかなと思います。ダークな世界観すら吹き飛ばすぶっとびキャラの仁がいたからこその傑作だと感じました。
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