大切な幼なじみを祭りの生贄にされ喪った少年と、国を統べる為に人ならざる力を受け継いだ幼なじみとの恋のお話。
邪馬台国の卑弥呼が実は男だったという設定と卑弥呼の正体は宮中の秘事であることからの秘め子と呼ばれるストーリー。歴史を上手く使った構
成と物語で、とても面白かったです。そこへさらに、重厚感溢れる画力で細やかに神秘的に、そして美しく描かれた背景や衣装、入れ墨など一つ一つが素晴らしく、本当に感心しました。巻末の参考資料の数を見れば分かるように、作者様の並々ならぬ意気込みと努力が見事に結晶化された一冊だと思います。
ヒストリカルな上に、呪術や信仰心を巧みに操る内容ですが、シキやヤマトの心情にも上手くスポットを当てていて、恋の展開もきちんと伝わってきます。特にシキは、卑弥呼の時と素のシキの時とで表情が変わり、強さと艶っぽさがきちんと描き分けられているのがすごいと思いました。
ただ、最後はもう少し先まで見たかった気がします。あの赤ちゃんが力を持って成長したところとか、シキが力を失ったあとも国が平和だった様子など、幸せな未来があればより納得出来たのではないでしょうか。シキとヤマトが周りに相談もなくえちをしてしまったという身勝手な行動があっても、ちゃんと皆幸せにやってるよというシーンがあったら良かったなと感じました。
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