昨今のラノベや漫画にアニメは、エロゲと同じように作られている。すなわちエロい描写、簡単に落ちるちょろインな女の子たち、ハーレム、感情移入しやすいよう没個性的でご都合的に優秀な男主人公。お助け役一人を除いて完全に排除されたそれ以外の男子。「テ
ンプレへの回帰」を目指した古味直志の次回作であるニセコイがまさにそれに当たるだろう。もっとも、編集部がエロの売り上げの味をしめるまでは当初エロへのアンチテーゼを貫いてはいたのだが。
本作ではそれが一切ない。女の子と男の子がお風呂の時もトイレの時も寝る時も手を繋いでいなければならないというドキドキ展開であるにも関わらず、だ。ヒロインのエルレイン・フィガレットは素朴な美少女で、エロいとは感じさせない、ただかわいい。主人公のキリ・ルチルも少し変わり者でよく目立つ、没個性的な昨今の感情移入型主人公とは一線を画し、第三者的な立場から見ていたくなる存在だ。この二人はとにかくエロさは見せなくていいから、仲良く健全にイチャイチャしていてくれと言いたくなる。エロゲーマーがエロゲをやるよりも、腐女子が推しカプを見る目に近いだろう。
さらに物語のベースが冒険物ときている。当然バトルもある。それは主人公が突然覚醒して最強になってアクションを見せる物ではない。何もできない主人公が傷つきながら必死で大事そうに女の子を守るという物だ。これが物語へのシリアスさと二人のベタつきの描写という相反する要素を同時に提供してくれる。
さらにヒロインは一人しかいない。ハーレムではないのだ。他にも物語で重要な役割を果たす美少女は複数人登場する。しかしその誰もがキリを靡かせる事はない。彼が異性に対して何らかの感情を露わにするのはエルーに対してだけである。もちろんそれは旅のパートナーとしての感情ではあるが、これによってニセコイのように別のヒロインが公式から冷遇されたり、そのファンが怒ったり悲しんだりする事もない。
誰もが嬉しく平和にニコニコして読んでいられる。ダブルアーツはそんな漫画だった。
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