明るくて前向きで、型破りの自分を気持ちよく自己肯定している主人公が、自分の男女観を少しずつ成長させながら恋愛成就する話。飽きさせない見事な展開で、貴族社会のしきたりやヒエラルキーを反映させて平安時代という現代とかけ離れた世界が生き生き描かれている。彼らの言葉が、当時の独特の用語と、現代語表現のミックスで、しかも読み手フレンドリーな用語解説が直ぐ傍にあるなど親切な作り。
平安時代の華麗なる服装は男女共眺めて楽しいが、人物達が静かに居る場合の配置されてる構図そのものは、何処かの絵巻物などでの既視感が強く、十二単の見本が実際本当に少ないのだなぁと思ったし、山内先生が漫画化に当たりご苦労されんだろうな、とも思った。建物の中も外も感じがよく分かった。
吉野君(よしののきみ)、鷹男、守弥などの登場締め括りは、ちょっと尻つぼみ感があった。
冒頭、瑠璃姫がいくらお子さま設定とはいえ、思慮に欠ける振る舞いが悪目立ちし、二人の前途多難を出したかったかもしれないが、わざとらしさを感じなかったわけではない。また、融のキャラも、ストーリーの狂言回し役に使ったにしても、内大臣家大丈夫なのか?、と思わないでもない。
また、破天荒で行動派で向こう見ずな姫であっても、それは無理では?というシーンも。読者をハラハラさせるために、または、彼女のキャラにヒロイックな味付けをするためのことであっても、微妙に現実味を落とした。
歌のやり取りが素晴らしかった。
添えられた解説がまたいい感じ。
そして、彼らを縛る決まりごとなども読んでいて話の縛り事として効いていて、興味が増した。
1981年から1991年発表のジュニア小説が好評だったことから、ほぼ同時期にコミカライズされたらしいが、時代物という性格も手伝って古くささはあまりない。唯一、高彬が殴るシーンだけ、アッとはなった。
こちらは文庫版から電書化。全6巻。
人妻編、どうしようか思案中。