父親の尻拭いに、自らを愛人として王子ケイテブに差し出したビクトリア。おとなしく収まっている女じゃないから、威勢のいい口もだが活発な行動力とで、王子はおろか彼の周囲の者までタジタジ。
旺盛な企画力で新しいことを始めることに躊躇がない。しかも、味方を作り出して受け入れられていく。その爆走ぶりはお見事。「愛人」としてのお務めまで加わってきてケイテブは籠絡か、と思いきや、そこはビクトリアの職歴から警戒が解かれない。
疑われても不思議ではないし、ましてや下心のあった身の上、第一、弟王子、イケメンに描かれており、材料揃い踏み。
序盤ネグリジェ姿で登場、しかも肉体アピール、愛人宣言と来て、毎夜のハーレム通いと、終始お色気路線強調。HQ原作の尊重かもしれないが、ヒロインの能力を買っていた弟王子の方がむしろ曇り無くヒロインを見ていたのではないかと思える所でもある。
まして、過去の事件にまつわる、親の因果が子に報い、の悪しき「掟」、時代錯誤的な因習を断ち切れない社会に、ヒロインが斬り込む要素のインパクトが相対的に薄まったと思う。
決闘シーンも、安易な展開だ。ストーリーは各所無理無理に進行、時代性の面でも、通信機器の充電をしたい、と言っていたヒロインと、「砂漠の民」の前近代性との隔絶感が、進んだ者による遅れているところへの指導、みたいに感じてしまい、なんとなく私は読んでいて居心地悪かった。それに砂漠で裸足になったら足の裏は火脹れにならないか?。
橋本先生の画力で、ベリーダンサーのように妖艶なコスチュームは見所と思う。
砂漠の移動や人数多めの人々の描き分けや、ヒロインが美しさを感嘆する中庭の描写なども、やはり技量を誇る絵が描ける先生が担当しなくては、こうはならないと思う。
ケイテプのリアクションや感情推移をもう少し見たかった感じがする。「いつも恐い顔してるわりに女々しいのね」など、ヒロインは自由にポンポン言っているのだから。