無料分だけで圧し掛かってくる悲しみの重層に購入をためらってしまった。「愛」を起点に幾つもの登場人物の背景が絡み合って頁を繰るたびに目頭が熱くなり涙をこらえるのが辛いほどの読み物。ダニエルが真相を明かし子供を諦めて去った後「静かな生活の中で急に訪れる思い出」に咽び泣く場面では ページを繰る手がしばらく止まってしまった。リードの母のポツポツとした語りは説教でなく、自らの思考を只々口に出し現状を吐露していた。それがかえって説得力を持ち、オットーを閉口させ、リードを納得させた。ダニエルの感情も「諦めない」執着を見せてあり「諦める」納得も見せてくれていて、これは物語を楽しむだけの読み物で収まらず、読み手の人生さえ考えさせられる。ジャンルを超えて素晴らしい物語だった。「あの夜をさがして」表題を聞いただけで胸を締め付けて涙が止まら無くなります。