なんとも肝っ玉の座った、というか、懐の大きな、爽やかイケメン設定。公明正大で、交際もこそこそしないおおらかさ。ヒロインの相手に「テキサス男」を選んでいる設定と、ある種理想の男性像をクッキリ映し出していく展開とで、半分趣旨は通っている。こんな男性がいいんだと、作者が、彼の人間力・男性力を全開させて、ヒロインの抱える生き辛さを粉砕。
その堂々たる態度に、周りの小者的抵抗勢力やたかるメディアのうざい小蝿まで反旗を引っ込める。好戦的ではなく、小細工もせず、常に正面突破。情が深く、恋愛も単純明快に。
農場経営者、弱きを助ける(政治家足り得る)正義感も、困難に真正面から取り組む満ち溢れる気力も体力も、全て持ってる、アメリカのど真ん中、テキサス男性を、アメリカ人の思い描くような形でここに登場させましたというストーリー。
それを絵が違和感無く収め、彼のストレートさの画像表現に成功。柔らかくこなれたラインでしっかりと、恐らく文字では(読んでないので見当違いだったらすみません)もっと猛々しかったかもしれないところを、日本人漫画家の画力で、美化ビジュアル化されてるのではと想像する。
きっと写しているものは、惚れ惚れするようなカラッとした心意気、太陽光と広大な土地が似合う男の器、だろう。
絵柄は、人好きがして可愛らしいがこどもじみた印象は抱かせず、生硬な輪郭がない手慣れた筆致。
いいと思う。
ラブシーンも綺麗。
自然に出会いとその後が進行し、直情径行型の彼の行動を読み手に説得するコマの見せ方、頁数が薄く感じるテンポの良さ、あさみ先生作品は初めて見るが、雑な箇所無く、楽しんで読み終えた。
ただ、ヒロインのお母さんの状態が、物語前半に想像させる暗さ苦しさが、後半反転しており、そのきっかけ場面の描写は無い(愛しているのね、の合点は有)ので戸惑う。症状改善なのか、たまたまなのか。しかも、ヒロインと母親の苦悩の過去が、母親当人の雄弁で打ち消されるかの流れ。被害者として社会とマスコミの餌食となっただけではなかったこと、華も実もあった時期もあったであろうことを窺わせており、前後半の彼女のキャラ分断には、読者への親切心が要ったと思う。
しかし、何故邦題には「夜風」が入る?
相変わらずHQはタイトル付けのセンスを疑う。いつもコミックの方はこの妙な邦題に付き合わされ気の毒だ。それとも原作なら関連があるのか?