相手が冷たければ冷たく映る、暖かければ優しく映る、氷の伯爵と呼ばれていた人は、接するものによっていろいろに映った。
このストーリーも、HQにありがちな、人嫌い?、愛に臆病?な男性が、ヒロインにやっと一歩踏み出してプロポーズ。周囲の手助けを借りて、ワンちゃんも、ヤドリギの言い伝えさえも味方につけて。
熱いタイプじゃない。むしろ、ヒロインじゃなくても、何を考えてるのか判らなくて、確かに、「氷」と並び称されるのも無理はない。
しかし、彼も、戸惑ってどう振る舞ったら良いか解らないのだった。厳しい一面を見せる彼が、努力する者には惜しみなく力を貸す。お金の活かし方を知っている人間だ。
ヒロインが自分のためでなく叔母のために資金援助の依頼をしたとき、いかにもハーレクインな、彼がその実情まで知らずに、他の群がる親戚のようにせびりに来たのかと思うシーンがある。
このあとの、彼なりのヒロインに感じる魅力が、この伯爵のキャラを際立たせている。
要はなんでも言える仲が楽しいらしい。
二人の恋の行方は平凡だが、二人の恋の進行を彩るこの季節ならではの二つのモチーフが出色、コミカライズの良さを味わえる。70頁から76頁の冬景色。
また、96頁と98頁のヤドリギ。気合いがこもっていて、二人の気持ちが盛り上がっていく雰囲気を側面から盛り立てている。繊細で優美な描写一つ一つに、絵的な、詩的な、ロマンチックが溢れる。
真冬の恋の美しさ! 冬の自然の良さを知る伯爵がその季節に、その冬の素晴らしさを一緒にヒロインに見せたいと思うとっておきの景色。
私も、冬の軽井沢の落葉松の景色などを思うと、その映し出される光景に魅入られる二人がよく理解できる。スケートは、日本人作家の少女漫画でも古くは外国舞台ものなどには頻発のモチーフと記憶するが、氷の事故はどうしても使い古され感が否めない。
人物は絵柄では余りインパクトはない。ヒロインは可愛らしい。
伯爵は、難しい性格というキャラのせいか屈託の無い明るさなど期待できず、冬という季節のもつ雰囲気と相乗的に少し暗め。
幼馴染みの牧師様のほうが素敵に見えた。
それはさておき、ヒロインを育ててくれるおば様、というのもHQにはお馴染みだが、このストーリーのおば様は素敵。ヒロインが、伯爵に叔母のことを頼むのも、共感できる。邦題がよい。