冒頭はサスペンスを想像するが、すぐ薄気味悪い雰囲気でホラーっぽくなる。日の光はほぼ出てこない。黒マントの男はいかにも、の登場。暗闇が邦題に入っているシリーズ物(共通の人物はナシ)風で、原題は「トワイライト(黄昏時)」で括られている。吸血鬼ものの必須アイテムは余り出てこない。トワイライトゾーンの名で一世を風靡した人気シリーズのドラマ?映画などをも思わせる。黄昏時は闇夜よりもその入り口の、人間がまだ動いている時間帯。これから魔物が動き出す時刻。
何となく怖いけれど、悪人じゃない気がする、レベルの男性が魔物、というわけだ。
ヒロインの漠然とした、その正体の判らない男性にうっすら抱く信頼というか好感が、夜に吸い込まれる様を象徴するかのよう。
先に読んだ「暗闇のラプソディー」と同趣向でこちらは見守り型、それを、守護聖神と作品ではいう。ストーカーも出て来て、よっぽど叔父夫婦やストーカーのほうが人間の姿をした化け物的だとの理屈もわかる。「暗闇ラプソディー」は人間の方を守護霊に見立てたヒロインの方が吸血鬼、彼の存在がヒロインの生きる力にもなっている。一方こちらは、ヒロインの方は吸血鬼である相手の存在を第六感で掴んでいるものの、彼は自分がソレであるため踏み出してこない。
こちらの「暗闇のヴィーナス」は、彼をヒロインが身体を張って守るのも素晴らしいし、死なせたくない気持ちが育ての母の意向にもあることに助けられて、二人の暗闇への旅立ちに繋がる異色の展開。ヒロインは薄幸の幼児期、そこからの救出に当たった関係者の善意のチームワークを感じて、何だか納得の結末へ。
ヒロインは彼が何者であろうと彼の事が好き、という話なので、話はまさに私の好みのパターン。
二人のシーンはそれほどはラブラブが無い。彼は正体故に近づいては来ないからだ。
でも、ヒロインはずっと心の中に彼を留め、彼への想いを何とかしようという気持ちがあった。
初めからヒロインの心は彼のものであった、ということがストーリーを通じて解るような形。
闇夜の空を駆け抜ける二人がゾクッと素敵だ。
人はダークなものにもなぜか心引かれる、ということに上手く乗っかっている作品。
2019Nov25現在追記:HQ「暗闇のラプソディ」原作小説読書中にダンテが登場。やっと繋がった。漫画では接点不足だが。。。