お話の世界はなんて美しいのか。そして海がきれいで巻頭カラー頁のブルーと、二人が出会うことになる山道。イタリアが舞台とはロマンチックな!。
白井先生、白黒だけの色使い頁の海も素敵です!!
しかも私の好きな、相手のバックボーン知らず恋に落ちるパターンのストーリー。彼が文無し青年であると思っていてそこから好きになってるお話。お金もないがステータスもあると思ってない。けれど声が聞こえた気がしたとか、センサーとか、いちいち二人の結び付きを語っていてその通い合う雰囲気がよい。
HQによくあるとびきりの身分差乗り越えるシンデレラストーリー。永遠の紋切り型。よく飽きずに読めるものだと自分の嗜好に感心する。
井上恵美子先生もこういうのがあった。どれも変わり映えしないのに、読んでるときはやっぱり楽しい(付記:エミリー・ローズ原作「モンテカルロの誘惑2 地中海にささやかれ」)。大昔少女漫画で、ハイデルベルグでひとときの学生生活を楽しむ王子様のこんな束の間の恋で、死ぬまでもう出られない王室で思いながら死んでしまう、などというそれは悲しいお話(木原としえ先生と記憶してます)があって、トラウマになるほど印象的で、若かった自分の心を揺さぶった。「悲恋物」という、名作扱いされるずるいポジション取りが、私にわだかまりを残し、ハピエン志向の一因となった。確か何か有名なオペレッタか何かの翻案だとは思うのだが、ドラマチックに引き裂かれた、巧い盛り上げで終わる恋の話で、作者の手のひらでたっぷり涙を搾り取られた。元来ほぼほぼああいう連中に自由はない(最近は恋愛結婚だが)のだから、こういう恋愛至上主義の HQストーリーが夢を膨らませてくれてよい。昔は今みたいな格差婚は美談には行かなくて。
現実社会は世界の独身イケメン王子はメディアが調べ尽くしてる。
イタリアに程近い国設定で何日間も知られずにいた、なんて現代の設定の話ではありえない。