ネタバレ・感想ありあの日ぼくが見上げたのは…のレビュー

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知らぬうちに涙がこぼれました
2022年6月12日
都会の母子家庭の少年が田舎の実家に1人預けられてしまうことから始まるお話。
預けられた先は優しい祖母、優しい隣人達がそのまんまの彼を受け入れてくれようとしますが悲しみと寂しさで絶望している本人が受け入れることができません。

乾いた土の中では生きられない。
彼の母親も生きるため生かすために乾いた土から避難して、息子も避難させたのではないかな。
人間は不思議なもので自分ばかりを見ているとどんどん乾いてしまう。乾いて欲しがり刺々しく身を硬くしてしまう。
ふと目線をあげて他のことを見ることが出来れば途端に乾いた土に潤いが戻ることがある。そして与えることができるようになる。

彼の成長や環境をカブトムシやセミの変態になぞらえて進んでいきます。
必死で隣人の手を握った瞬間、彼は潤っただろうし、羽化し未熟ながら綺麗な羽を持ったのではないのかな。

周囲に翻弄させられる子ども達も、頑張ってるおとな達も、何度も何度も身を硬くしその度に綺麗な羽を羽ばたかせながら都会であれどこであれ自由に力強く目線をあげていて欲しいし、私もそうありたいと思いました。

素敵な短編でした。

☆☆腐を心の支えとしている私は5年後位のBL妄想で二度美味しい。純粋な読者の方にお詫び。ごめん性だから。☆☆
羽化したての蝉の姿は本当に美しいです
2021年10月30日
フォロー様のレビューを拝見して、カブトムシをモチーフにした少年のひと夏の物語は何だかヒリヒリしていそうだ、と構えて読みました。
子どもの頃、あるいは、しんどい時期に読んでいたら、この物語が伝えたかったことを素直に受け取ることができなかったかもしれません。境遇が似すぎていながら、周囲(の人たち)が違う…と人のせいにし、悲観に繋げていたかもしれません。
親がいてもいなくても子どもは見た目には成長していく。自然界のカブトムシも然り。カブトムシの羽化は誰にも手伝えない。見守っても、声援を送っても、結果は変わらない。でも、人に飼われるカブトムシは違う。環境を整え、必要な世話をすれば、羽化不全は起こしにくい。逆に放っておけば、羽化にまでたどり着けない。人間の子どもも同じとは言わないが、子どもは、手を差し伸べ、寄り添うだけで変わる何かがある。
私は、「良い親子関係」というものには恵まれませんでしたが、思い返せば、たくさんの人との関わりがあって、今があります。卑屈になることなくこの物語を読み、そして、「大人の立場」として少年たちを見つめることができたのは、その繋がりを経てこそだと思います。やり取りをさせていただいているフォロー様方にも感謝です。
「周囲が違う」と言いながら、視野を広げてみれば見えてくるものがある。長く足元ばかり見降ろしていて、ふと見上げた時に気付くことがあるような、そんな感覚です。
子どもたちの言いようのない不安や寂しさに気付けるような、喜びや嬉しさを分かち合えるような、そんな世の中の一員でいたい、そう思いました。
また、きっと会えるね…
2021年10月25日
(63頁/200pt)
カブトムシは夏の終わりに卵で産み落とされ、2回脱皮した幼虫は土の中で冬を越し、翌年の春にサナギ化して2週間後に羽化し成虫になる。夏の初めに地上に出てきて樹液で栄養を摂り、交尾をし、産卵して夏の終わりに息絶える。
短い生の間、全力ですることばかりだ。

10歳の夏。母親と2人家族の4年生の有季(ゆうき)は、母親に「一人になりたい」と言われ田舎の祖母の家に預けられる。

有季の寂しさを思いやる祖母。同い年の泰宏(やっちゃん)がくれたカブトムシの幼虫。
誰にどう気遣われても、応える余裕などありはしない。いつまでと期限を言わない「一人になりたい」は心を喰らう悪魔の呪文。要するに「お前なんか要らないよ、邪魔」ってことだから。
呪文を聞いた心の表面は擦りきれてヒリヒリするから、傷つかないようトゲトゲさせておくしかない。丸ごと包(くる)もうとする人の優しさも、トゲトゲに引っ掛けてズタズタにしてしまう。そしてそのことに自分でも気づいて更に傷つく。
自分がどんどんイヤな子になっていくと感じる辛さ。1人で背負う姿に胸が潰れそうになる。

心も体も簡単に大人になれたらどんなに楽だろう。だが現実は、親が居ようが居まいが、毎分毎秒、自分ひとりで戦いながら成長していくしかない。
全ての子ども達の羽化が健やかであれかし。
良いお話です。
2020年2月10日
ひと夏を田舎で暮らした少年のお話です。感動しました。友達出来て、ちょっと 成長した少年が 逞しくさえ思えました。
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作家名: 東城和実
出版社: Jコミックテラス