彼ヴィトの真面目さが伝わる話。
信じてないなんて言われてさぞ傷ついただろうなぁとか、でもヒロインホリーにとってそうなってしまうのは、仕方のないことなんだよなぁとか、そんなことを思わされながら、恙無く終了。ドラマチックな盛り上りはあまり無かった。
私の好きな「ありのままの君が好き」というのが入っていて、彼のヒロインへの思いの現れ方は能弁でない印象が有ったのに要所要所口説きキラー。
雪の中に、立ち往生するヒロインの困っている、その降雪の白黒とグレー使いの情景が冒頭からよく表されている。他のシーンでも巧みなグレーの使い方は羽生先生だなぁと眺めて唸ってしまう。
羽生先生、絵にしっとり思わせ振りな、訴えかける眼差しだとか、人物の表情に情感あるのに、ストーリーは大体いつもこんな「およ?」というオチでサックリのジエンド。もうひとつ読み手の私の心に、踏み込んでの何かが欲しかったと、些か淡い印象がもどかしい。私は味わって頁を噛みしめて読み進めたいタイプ。サクサク読む物はどうも・・・。
HQは高めだから、なんとなく勿体ないと感じる。
一応物語上の二人への揺さぶりはあるにはある。アポロさんよぉ~、という所が。
果たして未発表アポロ編ではキャラ変するのか?
親に恵まれなかった二人、というパターンのロマンスは、羽生先生というより、その前の原作の作られ方の限界によるものなのか。どこかで不幸を与えたがる作り手のメインキャラへの負荷のかけ方と、運命が幸せに転換してくれることの配分に私には安定感が感じられないからかもしれない。それこそ、クリスマスシーズンのお小遣い稼ぎの為だけに、柳の下のどじょうみたいに、感動「させる」勘所を取り敢えず押さえて原作が発表されたのか?と疑ってしまう。
これからはクリスマスが楽しめるようになれて良かったねと、出会った日のことを素朴に喜び合う姿を見て私も幸せをもらう。そこは普通に良かった。
彼の言葉説明以外に、彼の誠実をほかの表現でも滲ませられたらもっと良かったかもしれない。