CEOに登り詰めた苦労人、叩き上げ。支援有っても一代で築き上げるのは立派なことなのに、名家の誇りはそういう成金男を、「お上流」のお仲間に入れることを拒絶。嫌らしいことだなぁと思うけれど、封建的な上流社会のあるある閉鎖性や、悪事を働く人間がのさばるのに排除できないもどかしさを、しっかり若き二人の巨大な壁として描く。レオというひときわ高く硬い障壁がやっと去ったと思っても、いろいろあるな、という感じ。
でも二人はずっと互いに相手を好きなのが胸を打つ。絵が美しい。咲きかけた花が何度もしおれかける。
家が大事、という階級に生まれると好きな人と自由に付き合えず大変。ワルだったのは本人だけのせいではないし。
ヒロインは出来る範囲で自分から努力している。頑張って意思表明もして。ところどころ彼にアピールしてく積極性が気に入った。
遺産相続を巡る問題は、絶対額の高さから生じるのではなく、なぜ誰かさんより自分がどうだったのか、という相続人達の不公平感が大きい。自分が評価されていない結果としての配分、故人に自分の貢献を生前認めてもらえていなかったのだ、という、考えたくないことを突きつけられたことへの怒り。
見下している人間のほうが認められることへの屈辱感あからさま。
ところが力を認められても、ジョシュは血筋面認められてない。
凄まじい義母の悪意。笑えない犯罪行為、そんなやり過ぎの暴力人間の近くに善人ジミーが居た奇跡。鬼も仏(?)も居る。彼なくして物語成り立たず。女の子っぽい見た目が少し気になる。役割的に仕方がないか。
メイン二人のシーンは丁寧で、漂う空気に味わいがあり素晴らしい一方、ストーリーは全体に本来ドラマになるエピソード一つ一つスピード処理で、暴れているキーリーの絵が荒れたように見える。
好きな人を何年かけても諦めず、というのが遂に成就する話は、やっぱり私は大好きだ。
ラスト、彼がテンプルトン家にどうしてもずっと受け入れられなかった理由の一つ、実はそんな理由など最初から存在しなかった、とわかるタイミングがいい。
HQには、わざわざ「高貴な」血筋設定必要?とよく思うものだが、この場合はこれまでの馬鹿馬鹿しいほどのこだわりを鼻で笑いたくなる。ある意味、そこに読み手の抱く復讐心への、フォローにはなる。
ジョシュのジミー評が、ジミーの功績に、見合わないのが少々残念だ。
4.5のつもり。