この世界の悲劇的な未来についての壮大な物語。でもこれは「つくり話」なんかじゃない。作家がこの物語を編みだした構想力の底には、現在の世界がマジでやばいゾというシビアで知的な現状認識がある。だからこそエリオたちが生きるこんな未来世界になっちゃったのだと、頁をめくるたびに思わせる。そんな未来世界でも、もちろんエリオは魅力的。さて私たちも数十年後の未来世界でエリオみたいに誠実に生きられるかな。魅せられるのは物語だけではない。描線オタクの読者としては、スクリーン・トーン(あるいは影アプリ)を使わずに、影をシュシュ、シュシュと手描きしていることに驚嘆。その手描き線の膨大量ときたら!立体を立体として捉えるデッサン力が図抜けているだけでなく、その立体性を表現する影の描線のなんと美しぃ~~ことか!