ネタバレ・感想ありロングロングケーキのレビュー

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甘くてほろ苦い青春の一皿
ネタバレ
2026年9月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「ロングロングケーキ」という可愛らしいタイトルから想像する雰囲気とは少し違い、登場人物たちの心の機微がじんわり沁みてくる作品でした。何気ない会話や日常の出来事の中に、それぞれが抱えている想いや言えない気持ちが滲んでいて、読み進めるほどキャラクターのことをもっと知りたくなります。恋や友情だけでは簡単に片付けられない感情が丁寧に描かれているのも魅力的。すれ違いや戸惑いがあるからこそ、ほんの少し距離が縮まった瞬間がとても嬉しく感じられました。派手な展開で一気に読ませるというより、ゆっくり味わうことで作品の良さが増していくタイプの物語だと思います。甘さの中にほろ苦さがあり、読後にはなんとも言えない余韻が残りました。タイトルが気になった人には、ぜひ先入観なしで読んでみてほしいです。日常の中にある小さな幸せや、人を想う気持ちを大切にした物語が好きな人なら、きっと心に残る一冊になると思います。
豊かな心と本物の知性で物語を紡ぐ作家
2026年8月16日
「花の24年組」と呼ばれる少女漫画の巨匠の一人である大島弓子先生、個人的に萩尾望都と並ぶ天才だと思っています。

大島先生の代表作と言えば『綿の国星』、『バナナブレッドのプディング』ですが、大島調とも言うべきクセがある…特にバナナの方は、繊細な少女の心と救いを描いた傑作であることは間違いないのですが(大好きなのですが)、クセが強すぎて受け入れられない方がいるのも事実。
それがいつしか変わった。目の大きな少女漫画絵からプチトマト目の地味な顔立ちに。だけれどもセンス抜群の絵柄で、大島調も調整されて、誰でも読みやすい作風に変化した。人生を斬新な切り口で、悲しみを極上のユーモアに包んだ作品群は、どれも代表作と言っていいくらいのクオリティです。

大島作品は物語の〆方が本当にどれも素晴らしいのですが、表題の『ロングロングケーキ』では脇も脇であった友人が登場して、一つの世界の見方を提示します。これと似た発想に基づいた作品に触れた時、『ロングロングケーキ』はさらっと軽やかに、なんて素敵な表現だったろう…と、思い出すのです。

最近他作家さんのSF作品を読み、また思い出したのでこちらにレビューしてみました。
表題作以外も名作揃いの一冊です。
心に残る作品がいっぱい…
ネタバレ
2025年1月26日
このレビューはネタバレを含みます▼ 表題作の他に6編が収められた短編集。巻頭の宮沢賢治の詩に着想を得た大島先生が描いた詩情溢れる物語「いちょうの実」がいいですね。紙の本でも持っていた本なので、(当時)読んでいるはずなのですが全く印象に残っていませんでしたが、今回再読してみて、文庫に組み直すというか纏める時に収録する順番はかなり考えられて並べられているのかなとか考えてしまいました。というのもひといきに、先生の世界に誘い込まれてしまいましたから。大好きな「秋日子かく語りき」はラストが壮絶なまでに美しく、コミカルでありながら残酷な「山羊の羊の駱駝の」も良かったし、夢と現実が交差するSF的な作品の表題作「ロングロングケーキ」も良かった。夢か現実かあやふやな世界でコタと宇さんはずっと一緒に生きてほしいと思いました。
短編「山羊の羊の駱駝の」に思うこと
ネタバレ
2023年9月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ 数年か十数年か前に手放してしまった大島弓子の漫画を今どうしても読み返したくなって電子で買いなおしている。この短編集収録の「山羊の羊の駱駝の」、初出は『ASUKA』1988年1月号。壊れた心を抱えたまま成長した少女の行動が、周囲からは奇異な目で見られ理解されず、彼女は次第に暴走する。感情を殺して生きることに慣れてしまって泣くことさえできない。事件になれば周囲は口をそろえて言うだろう、家庭は普通、普通って何?学校ではいたって真面目、真面目って何? 救いはほぼない、かなり重い話。雪の降る場面が静かで悲しい。
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作家名: 大島弓子
出版社: 白泉社
雑誌: 白泉社文庫