「女の友情は無い」という言葉をよく耳にしますが、「壊れやすい」の間違いじゃないのかなと思います。なぜなら、女性は共感の生き物で、子供を産み育てる生き物で、どちらにも属さないこともできる生き物だから…女性の生き方が多様だからなのだと思うのです。既婚と独身、子有りと子無しでは見ている世界が違うし、何気なく言った言葉が相手を傷つけ、苛立たせることもある。共感できないと距離が空いてしまう。この小説にはほぼ男性が出てこず、既婚代表として小夜子の夫の修二と、独身代表として葵の会社に出入りしている木原がいるのですが、少女漫画のように都合の良い理想的な存在ではなく、女性から見て残酷なまでにリアリティのある存在として描かれています。作品全体が「女性という生き物の生体」を心理的に分析して報告した実験レポートのような、正確で的確な印象。特に「独身女性の集団に聞き上手のマメな男を放り込んだらどうなるか?」という問いの結果となるクライマックスには思わずゾッとさせられます。様々な立場の女性心理を非常に巧みに共感的に描いていて、泣くようなシーンではないはずなのに、途中涙が込み上げてくるシーンが何度もありました。壊れやすい友情だったとしても、お互いの立場を想い合うことができれば修復できることもある。そう思わせてくれる結末には救いがありました。小夜子は作者に性格が似ているとのことですが、だいたい自分を主人公にすると自己弁護や都合の良い展開に終始するところ、良い面も悪い面も包み隠さず客観的に描かれているところに、実力を感じました。これを男性が読んでわかるのかどうか、感想を聞いてみたいです。