ネタバレ・感想あり天下四国のレビュー

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南異郷で謎解きする飛牙と裏雲の番外編追加
ネタバレ
2023年11月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 講談社文庫から刊行された天下四国の六冊の物語に新たに番外編として書き下ろされた『異邦の使者、南天の神々』が追加されました。
徐の第十六代王寿白が庚に迫害されて唯独り南羽山脈を越えて辿り着いた異郷の国マニ帝国での日々が寿白改め飛牙となった者の命を繋いで、咄嗟の時に臨機応変に対応できる逞しい漢に育ててくれたのは確かなのです。飛牙の宿した朱雀玉は異郷の地に於いても少なからず彼を助けてくれる大きな力になっていたことが、此の番外編から推察されます。
今回の飛牙と裏雲の異郷への道行は、世話になった村の恩人の苦境に駆け付けて、人生で一番の絶望を抱えてしまっていた時に受けた恩を返す意味合いもあります。
以前にも世話になった不思議人物パールシの手助けもあり、飛牙の推理も冴えて、無事ではないけれども事件も解決します。裏雲の虫の知らせか勘の冴えにより、飛牙は助け出されるのですが、飛牙は危機管理能力が少し落ちてしまったのかと思われました。一歩間違えれば死んでいたのだから用心は肝要です。もしかすると、話を面白くするためにこういう設定にしたのなら其れは止めて欲しいです。王族の夫がある女性が宮殿の地下に呼びつけるというのは、普通に考えても変で何者かに誘い出されているのが分かるので、敏い飛牙が其れに気が付かないはずはないからです。しかし、考えなしの飛牙なので、其れもあり得るかもしれないと思ったりもします。帰国早々に虎に食われそうになったのも、太府の妻と知らずに誘われて身売りしようとしたからでした。飛牙の本質は変わっていないのかもしれません。
パールシも気が付いていますが、裏雲の飛牙に対する想いと、飛牙の裏雲に対する想いは種類が違うものらしく、飛牙は態とはぐらかしているのか、気が付いていないのか、読んでいる此方がじれったくなってきます。裏雲にしてみれば、泥団子の玉を宝物にして持ってくれていたのに、と恨めしい思いになるでしょう。あれは、竹馬の友のような親愛の情でしかなかったのかと。報われない裏雲の愛です。けれども報われてしまうと絶対に甜湘に感づかれてしまいます。
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作家名: 中村ふみ / 六七質
出版社: 講談社
雑誌: 講談社文庫