前作の「ずっとあなたを~」は、楽しいだけではない設定の、おとぎ話のような作品だと思っています。無残な事件の背景には、ほぼなにも説明がなかったし、心情のつづられかたにいまひとつ引き込まれませんでした。
でも、この「もっとあなたを~」を読み、当初は、購入するかどうか迷っていましたが、読んで良かったと思っています。なぜ、先王の弟が残酷な無理心中を図ったのか(・・? この作者さんは、前作を書くときから、その背景を設定していたのかどうかは、読み終えたあとでも、ちょっと疑わしいと思っています。
それは前作でほんの少し触れられていた、先王の弟殿下の日記に、まったく薬のことを独白する部分がなかったため。多少のほのめかしはあっていいように思います。
今作の王妃となるヒロインの亡き父親の日記には、苦しい胸中が記されていて、無理心中のなぞ解明へ、そして対決のクライマックスへと向かうシーンに、ようやく納得できました。最終章はとてもほのぼのとして、セリフも楽しく読めました。
この方の作品を2作品読みましたが、心情をつづる文章に物足りなさを感じるので、これで十分だなと思いました。