「一匹と九十九匹」よりも人間に対する愛を感じて、どのお話を読んだ後も、読む前より世界が優しく感じられました。支離滅裂なようで筋が通っている気がするのですが、どんな筋かは理解できていません(笑)とにかく、人間というどうしようもない生き物に対する大きな愛が詰まっているように感じました。
うめざわ先生の短編を読む時は、いつも傍観者のような、読んでいる自分も含めて俯瞰しているような感覚で読むことになるのですが、「唯一者たち」では初めて登場人物達の視点で読むことができました。自分の努力ではどうにもできないことを自分の努力でどうにかしようとあがき、結局変われない自分に絶望して、自分は他人に迷惑をかけるだけで生きている価値が無いから死のうと思うんだけど、怖くて死ぬこともできない・・・、主人公のような性癖を持っている人に限らず、こういうことって割とあるのではないかと思います。自分に生まれたら自分しか生きられないし、それは誰にとっても自分ではどうしようもないこと。他の作品と比べたら感情移入して読めましたが、最後にはやはり登場人物達の視点から解放されて、ただありのままを眺めるだけの私に戻っていました。本当に、うめざわ先生の作品って不思議だけどおもしろいなと思います。