ふっと込み上げてくる懐かしさ。すでに失くしてしまったものが蘇ってきます。
坂の下で帰りを待ったあの夕暮れ時、心地よかったおじいちゃんの膝の上、酸っぱすぎて食べられなかったおばあちゃんの梅干し。…なんだか泣きたくなってくる。(あ、これはネタバレじゃなくて、私の思い出です)
健吾と瑞人、彼らは、移りゆくもの、変わっていくことを愛しいものとして心に残していく。切なさと寂しさも一緒に、慈しむように。
読者の目には、彼らの関係性は明らかにされないけれど、感情がにじむ表情、仕草から、十分過ぎるほどに、満ちる愛情が伝わってきます。胸がいっぱいになって、少し苦しくなります。
きっと、誰の心にもある、あるいは、誰の心にもあったらいいのになと思える、あたたかくてやさしい場所。
自分もほんの少しでも優しさを持ちたいな、と読み終わった後に思いました。
大好きなymz先生、ずっと浸っていたい世界です。