いずれも楽しめた作品が一冊になってさらにまばゆい。HQに不可欠の「セレブ」を描ける麻生先生ならではの目で楽しめるコマ沢山。
個別に読んで、「憎しみが情熱に変わるとき」は4を、「愛されぬ妻」と「罠にかかったプリンセス」に5を、以前に付けさせてもらっている。特に、罠にーーは、全レビューアーさんで3作中最も低い3.8(13件現在で)となってしまっているが、私はいいと感じた作品だ。
「罠にかかったプリンセス」では、プリンセスの公務について、こちら一般庶民が仕事上で気の進まぬカウンターパートと対峙或いは協力する、というのと同様の場面が、含蓄あり。彼女にとっては、彼だから、なのではあるが。二人の間の悶々の荒療治にならない、思いきってステージを進めた顛末は早くに見えてしまう。相手を思うがゆえ、というのは上手く行動しないと拗らせる、ということが一つの核になっているが、お兄さんが仕事しているストーリーだ。そして訳あって一旦別れはしたもののやはり相手しか、という大好きパターンを堪能。一番好きだった人と結婚できないことのほうが多いですからね、現実は。。
「愛されぬ妻」、これも、本心は相手には見えないでいる話。そして、こちらも、好き合ってしまったら、別れようにもどうにも出来ない、危うくも切ない関係。近くにいても。
この、"好きなんだけれど、そこから先に進めない"、というのが、筋の上で納得させる背景(心情も大いに含め)を用意し、ハタから分かるように両者の気持ちを剥がしていく巧さがよい。
「憎しみが情熱に変わるとき」は、姉として妹の知らない部分、彼がヒロインについて知らなかった真相、いずれもストーリー中にそうだったのか、という所を持つ。
惹かれ合ってすぐ高まる二人の情熱は感じるが、憎しみのほうはよくわからない、またも邦題のほうのタイトル付けが陳腐だったか問題がここに。翻訳サイドのことなのに、コミカライズサイドが三文小説バリの安っぽい邦題に引きずられてしまう、典型的に気の毒なケース。
彼の愛と信頼で強くなるヒロインを見る、という視点で楽しんだ。
麻生先生作品の、豪華な宮殿や邸宅、そこにいる、庶民臭さとは真反対の人物の織り成す恋愛模様が、いかにもお話の世界に。遊びに来ている気持ちになれるところ。
この3作品が纏まっているなんて。パッケージに駄作混ぜ込まされず、麻生先生の絵がいいと思う人にはいいと思う。